在留邦人数が急増するベトナム。馴染める日本人、馴染めない日本人の弁とは?

現地の人と結婚しそのまま居着く人も

ハノイの旧市街

ハノイの旧市街。夜は屋台が多く、ビールなどが安く飲める

 一方で、すべての人がベトナムを嫌うわけではない。  ベトナムでは外国の言語を習得することは、そのまま収入に直結する。英語が話せると何ドルくらい、日本語だと何ドルくらいの給料がもらえると、大学生などはみんな相場を把握している。ちなみに、ベトナムの通貨ドンは桁数が大きいので、給料や家賃、高額商品はドル建てで提示される。  長期滞在だけでなく観光で訪れても、そういった語学堪能なベトナム人と出会うことができる。彼らの多くは海外渡航経験すらなく、ベトナム国内で英語や日本語を習得している。そして、実践で使いたい彼らは外国人に積極的に話しかけてくる。ただ、先の地域性もあって、ハノイでは飲食店(特にバーなど)で隣の人が話しかけてくることはほぼ皆無だが、ホーチミンはどんどん声をかけてきてくれる。  日系企業駐在員の中にはベトナム人と結婚する人も少なくない。在住者曰く「ベトナムで結婚する人は多くが社内恋愛」なのだとか。ベトナム語は難しくてできないが、当のベトナム人が英語か日本語ができる。そうなれば社内でも話す時間が増え、自然、恋愛関係になっていく。  そして、ベトナム人と結婚した人の多くが、そのままベトナムに居着くようだ。結婚相手だけでなくベトナムにも愛着が出てきて、帰任命令が出たらそのまま退職して日本に帰らない。こういう例は近年だけでも結構な数に上ると在住日本人が話してくれた。  また、先の地域性の話に戻るが、ハノイに暮らして20年近くになるというPさんは、ハノイ人は冷たい性格ではないと否定する。 「確かにホーチミンの人たちよりはドライなところはあります。でも、つき合いが長くなって、彼らの懐に飛び込むことができたら、とても家族思いだし、友人や隣人を大切にする人たちですよ」  Pさんによれば「上辺のつき合いで知らないだけ。実際にはハノイ人だって優しい」と断言する。筆者自身もハノイの滞在で市井の人たちが冷たかったという印象がない。  とはいえ、筆者もタイ在住が20年近くになるので、在住者の言い分も理解できる部分はある。たとえばタイはタクシーの乗車拒否や時間にルーズなどが頻繁にある。旅行の場合、そういったいい加減さも土産話のひとつにもなるだろう。しかし、住んでいて、毎日それをやられると正直ストレスが溜まってくる。おそらくベトナムが嫌いだという在住者もそういった気持ちがあるのかもしれない。  確かに住めば都とは海外ではなかなか簡単には言えない部分がある。とはいえ、いろいろとベトナム嫌いのニュアンスで話してくれた彼らも、なんだかんだ言って、いまだベトナムに住んでいるか、仕事でベトナムに絡めた仕事をしている。やはり、ベトナムはタイ同様、日本人を離さない魅力があるのだ。
新型コロナウィルスの取り締まりをする警察(?)関係の車両

新型コロナウィルスの取り締まりをする警察(?)関係の車両

<取材・文・撮影/高田胤臣>
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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