あえて三密に飛び込んでしまう人々。「自分は大丈夫」の裏にある心理状態

コロナ報道には身近な情報が必要

③心理的距離が遠い  最近、テレビでよく観る身近な存在である芸能人の感染・訃報のニュースが増えている。子供のころからテレビで観ていた志村けんさんの訃報は私も大きなショックを受けた。  そのような身近な人の感染・訃報を聞くと、コロナの脅威が他人事ではなく、その脅威に自分もさらされていると感じるようになる。みなさんも、同じような感覚があったのではないだろうか。これは、心理的距離による影響だと考えられる。  心理的距離とは本来、対人心理的距離感と呼ばれ、対人関係における距離感のことだが、脅威や課題に対して、どれくらい身近に感じるかの距離感として考える。  つまり、「ある対象(課題・脅威・人物など)と自分との『身体的距離』ではなく、どれだけ対象に対してどれだけ自分事として身近に感じれるかの、対象と『心の距離感』」である。  仕事でも、上司は担当者と比べて課題に対する心理的距離が遠いため、感情的ではなく冷静な判断をすることができる。それが逆に、冷静すぎて社員に対して親身ではないと感じさせてしまうこともある。  メディアは視聴者にコロナの脅威に対して心理的距離を近づける方法として、芸能人の感染だけでなく、より具体的な感染者情報を提供する必要がある。  例えば、今では都道府県単位で感染者数の情報が出ているが、市区町村単位での感染者数の情報を提供することでより心理的距離を近づけることが可能だ。より具体的で、自分が所属することが意識できるレベルでの感染者情報を出すことで心理的距離を近づけることができる。

行動だけでなく心理作用に目を向けるべき

 このように、「私は大丈夫」と考えてしまう人には、心理学的なバイアスがかかっている場合もある。  もし、その人の行動を変えたいのであれば、行動を批判するのではなく、行動の根底にある心理作用について理解することが重要だ。行動だけ批判して我慢させても、相手の行動を促進させてしまうだけだ。我慢を押さえつけるのではなく、方向性を変えて行動を変えさせる必要があるのだ。  相手の心理を正しく理解するためには、コミュニケーションとあらゆる可能性を想定する偏見無き分析が必要だ。そのために、ぜひ、心理学を活用してみて欲しい。 <取材・文/山本マサヤ>
心理戦略コンサルタント。著書に『トップ2%の天才が使っている「人を操る」最強の心理術』がある。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催中。
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