感染拡大防止に協力したのに補償されないイベント関係者たち
2020年2月26日、安倍晋三総理が「多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベント等については、大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は、中止、延期又は規模縮小等の対応を要請することといたします」という声明を発信したことを受けて、多くの大規模イベントは自粛に応じた。(参照:
首相官邸 令和2年2月26日 新型コロナウイルス感染症対策本部 第14回 )
周知の通り、この「2週間」という期間はズルズルと2か月以上も引き延ばされている。政府は持続化給付金(前年同月比で売上50%減少が条件、個人事業主は上限100万円)、特別定額給付金(一律で1人10万円)などの支援策を打ち出してはいるが、自粛要請から既に2ヶ月以上が経過して収束の目処も立っていない中、これらの給付では不十分なことは明らかだ。こうした事態を受けて、複数のクラウドファンディングが始まり、一般からの寄付を募り始めている。
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コロナ禍から芸術を守りたい“#SaveArts”プロジェクト
・演劇/歌劇/音楽劇の関係者のコロナ禍関連損失補填、活動再開資金として支援金を活用
・5月29日まで受付、現時点の支援総額 約455万円(4月30日23時 時点)
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舞台芸術を未来に繋ぐ基金=Mirai Performing Arts Fund
・コロナ禍によって活動停止を余儀なくされた舞台芸術に携わる出演者・クリエーター・スタッフの今後の活動に支援金を活用
・8月25日まで受付、現時点の支援総額 約1256万円(4月30日23時 時点)
だが、これらは本来は個人の寄付に頼るのではなく、政府が補償すべきことである。特にイベント関係者は2月末の自粛要請の後、真っ先に自粛に応じて感染拡大防止に貢献した業界である。それにもかかわらず、その貢献に見合った補償を受けていない。
こうした背景を受けて、
2020年4月29日の衆議院予算委員会で
共産党・志位和夫委員長は
安倍晋三首相にこの問題について質問。イベント関係者の陳情や海外事例を紹介しながら、政府による補償の必要性を強く訴えた。本記事では、この質疑を
信号機で直感的に視覚化していく。具体的には、信号機のように3色(
青はOK、
黄は注意、
赤はダメ)で直感的に視覚化する。(※なお、色表示は配信先では表示されないため、発言段落の後に( )で表記している。色で確認する場合は本体サイトでご確認ください)
質問に対する安倍総理の回答を集計した結果、下記の円グラフのようになった。
<色別集計・結果>
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安倍総理:
赤信号43%
黄信号24%
青信号18%
灰色 15%
*小数点以下を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはならない
論点のすり替え(
赤信号)や周知の事実の説明(
黄信号)が合わせて
67%と大半を占めている。また、
不要な言葉や意味不明な言葉を意味する
灰色が15%もあり、
何を言っているのか理解しづらい場面が度々見受けられた。
いったいどのような質疑だったのか詳しく見ていきたい。
実際の映像は筆者の
Youtubeチャンネル視聴できる。
本記事冒頭でも紹介したように政府が打ち出している支援策(持続化給付金等)では、今後も終わりの見えない自粛を続けざるを得ないイベント関係者を救うには不十分。志位議員はイベント関係者の声を紹介しながら、まずは総理の現状認識を確認した。その質疑は以下の通り。
志位議員:「あの、イベント中止とういことを先ほど総理も言われました。それによる損失の補填の問題です。イベントの開催自粛は総理自身が2月の段階から繰り返し名指しで行ってきたことです。それによってライブ、エンターテイメント、音楽コンサート、演劇、ミュージカル、スポーツ、その他イベントがどれだけのダメージを被っているか。ぴあ総研の調べでは、5月末までの推計で、えー、中止・延期等した公演・試合が15万3000本。入場できなくなった観客総数延べ1億900万人。入場料金の減少額3300億円と言います。逆に言いますとね、延べ1億900万人もの人々の移動を止めてるんですよ。
これ、巨大な社会的貢献じゃありませんか。ホリプロ社長で日本音楽事業者協会会長の堀義貴さんは私どものしんぶん赤旗のインタビューで次のように語っておられる。
『私たちは感染拡大防止のため国に協力しました。大手も小さな劇団も人によっては倒産・解散も覚悟しながら中止を決断し、多くの人々の移動を止めたと言われています。それなのに補償どころか労いの言葉さえありません。』
総理、この声をどう受け止めますか?」
安倍総理:「
あのー、おー、ま、これは、あのー、私も記者会見等で申し上げてきたところでございますが、そうした、あー、えー、イベント関係の皆様を初めですね、大変多くの、方々の、あー、皆様に、えー、我々の、お、えー、要請を受けて頂き、え、ご協力を頂いたことに本当に心から感謝申し上げたいと、えー、思います。その中で、えー、我々そういう皆様方に対しましてできる限り幅広く支援をさせて頂きたい。という中において、先ほど申し上げました、あー、えー、持続化、あー、給付金という仕組みを創設をして、えー、いたしまして、できるだけ早くお手元にお届けをしたいと思っております。あと、様々な、あー、えー、この流動性を、おー、の確保のためのですね、えー、対策についてもですね、しっかりと対応していきたいとこう思っています。(
青信号」
志位議員:
「あのー、持続化給付金と言われるんですが、これだけでは到底対応できない、あのー、方がたくさんいらっしゃいます」
志位議員は「現場の声をどう受け止めるか」という聞き方をしているため、受け止めた結果を述べている総理の答弁は全て
青信号
と判定した。
この答弁で総理はイベント関係者への協力に感謝を述べ、幅広く支援すると表明したにもかかわらず、その支援策として出てきたのは持続化給付金。この
持続化給付金は上限(個人事業主は上限100万円、法人は上限200万円)が設定されている上に1回限りのため、今後も続くであろう自粛期間を耐え抜くには不十分であることは明らかである。総理はイベント関係者の窮状をまるで理解できていないと言わざるを得ない。