――コロナ収束後、起こり得る業態の変化について、お感じになっていることがあればお聞かせください。
手元にお金が残る家飲みに慣れてしまって、外で飲まなくなるのではという気もしています。また、今の状況が一旦は収束したとしても、再度の感染拡大を恐れて飲食離れが続くのではないかと。外食へのフラストレーションが溜まっていたお客様が、一気に飲食店へなだれ込む、ということはないような気がしていますね。
――コロナ収束後もテイクアウトは続けるのでしょうか?
体力を使うこともあり、極力テイクアウトはやりたくないです。基本的にはお店に来ていただいて食事を楽しんで頂くことを想定していますので。
――休業するか否か、緊急事態宣言まで飲食店によって判断はまちまちであったかと思います。近隣やお知り合いの飲食店経営者の反応はどのようなものでしたか?
周囲の飲食店経営者の一致した意見は、6月でロックダウンにならないように、店舗営業を止めて4月で収束させようというものです。それでも利益が欲しい人たちは19時ラストオーダーの20時閉店で営業しています。感染予防を徹底していれば、そこは自由でいいと思います。
ただ、自分の店も含めて、今の状態を長引かせないように、テイクアウトオンリーにするという方針を取っている店は多いです。売り上げにはならないけれど、この状態が長引くよりはいいという考えですね。
特に私の小学校低学年の子は肺が弱いこともあり、絶対に感染させることはできません。自宅に帰ってもだっこはもちろん、一切近付かないようにしていますが、それでも、通常の店舗営業はリスクがあるのでできないという状態です。
――行政の発表や対応は必ずしも迅速なものではなかったと思います。どのような対応を行政機関に望みますか?
ある助成金交付の対象は、昨年の同月から見て減少ということが条件ですが、昨年の9月に2店舗目をオープンしたため、3月は会社として昨年比で5パーセント売り上げが上がってしまっているんです。売り上げのカウント方法は店舗単位ではなく会社単位なので。そうすると、支給の対象からは外れます。
また、借り入れも前年対比で下がっていないと融資を受けられないのですが、2店舗目のために融資も多く受けていますので、そちらも条件を満たしません。
4月の売り上げで始めてそれらのサポートを受けられる状態になります。そういう意味では他店より行政によるサポートを受けるのが遅れてしまいました。非常事態になったら一律にお金を受け取りたいですし、借りたいです。
――やはり短期間完全に店舗を閉める代わりに全額補償を受けられるのが良いと思いますか?
そうですね。最終的には政治判断になるので難しいとは思いますが、お客様に対する「外出禁止令」ではなく、飲食店経営者に対して「コロナを収束させるために店を止めてください、その代わりに補償します」と言われた方が納得がいきます。やはり補償がないので、どっちつかずになって店を開けているのではないかと思いますね。それでは外出制限の効果にも影響が出るのではないかと。
この状態が夏まで続くとなると、経営体力のある飲食店も厳しいのではないかと思います。先の見通しが立たないですね。
――他に行政機関に望むことはありますか?
今、ハローワークでは助成金の申請希望者の50~60人が行列を作って喧嘩しています。案内所を通して受付に行った人と直接受付に行った人のどちらが先の順番なのかということで揉めているんですね。最近は整理券を配り始めましたが、そんなことで労力を使うのは本当に無駄だと思います。
また、融資の申請は専門知識が理解できないと難しい部分もありますので、社会保険労務士に依頼して手続しなくてはならないということもあり得ます。そうすると、費用も掛かるし面倒だから申請しない、という経営者もいるんですね。
もう少し簡素な手続で、支援が必要な企業や個人事業主に助成金が届く方法があるといいのではと感じています。
――確かに、そうした制度があればもっと迅速にサポートを受けることができたかもしれませんね。
結局、国がどこまでコロナによる損失を補償するのかが、営業を続けるか否かのポイントになっているのではないでしょうか。現状、中小企業と個人事業主は体力勝負になっていて、経営の体力が持たない人は店舗営業をやらざるを得ず、経営の体力に余裕のある人は店舗営業しないという状態になっています。そういう意味ではコロナに対する危機感は薄いのかもしれません。
今後、もしこのような緊急事態が起きたら、条件なしで一律に助成金の給付を受け、お金を借りたいとは思いますね。それが今回のような緊急事態が起きた場合の行政機関に望むことです。
<取材・文/熊野雅恵>
<取材日/4月16日>
くまのまさえ ライター、クリエイターズサポート行政書士法務事務所・代表行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、自主映画の宣伝や書籍の企画にも関わる。