ガソリンスタンドに貼られたシャワールーム利用停止のお知らせ
「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。
前回は、コロナ禍によるトラックドライバーたちへの言われなき「職業差別」の実態を伝えたが、今回は、先日彼らに降りかかったもう1つの悩ましき問題について紹介したい。
前回言及したように、トラックドライバーの一部には、このコロナ禍の影響で言われなき差別を受けている人が少なくない。
「仕事があるだけいいと思え」、「コロナ運ぶな」と言った声には、「自分たちだって国が補償してくれればこんな状況下で仕事をしたいとは思わない」、「ならば走らないから自分の荷物は自分で運んでくれるか」という悲痛な叫びが聞こえてくる。
そんな中、トラックドライバーにとってもう1つ悩ましい動きが全国で広がっていたことは、世間ではあまり知られていない。
「
ガソリンスタンドのシャワールームの一時利用停止」だ。
実は、全国展開している大型のガソリンスタンドには、法人契約をしている長距離トラックドライバー向けのシャワールームが併設されているところがある。
店舗によって利用条件や方法は異なるものの、そのほとんどが給油をすれば無料で利用できる。1週間、長いケースだと1か月もの間自宅に帰らず、日々時間に追われ、かつ荷主先で肉体労働をする彼ら長距離トラックドライバーにとって同施設は、給油がてら手短に身を清められる数少ない「オアシス的存在」。ゆえに全国のシャワールームの中でも、普段からダントツに利用率が高い。
そんな憩いの場の利用停止。
後述する通り、4月24日現在は順次再開されているが、1週間ほど続いたその利用停止期間中、こんな時世であるがゆえに、今後の衛生面を不安視した多くのトラックドライバーからは、こんな声が上がった。
「1週間風呂無しかな(泣)」
「集団で入浴するわけじゃないのに」
「消毒どころかシャワーも浴びられない」
「スタンドのシャワーが使えないとかなりの打撃です。トラックステーションのコインシャワーなんか常に渋滞ですし、スーパー銭湯などは大型トラックが駐車できるところなどあまり無いですしね」
「ガソリンスタンドのシャワーが続々と閉鎖されてくのは、今からの暑い季節は死活問題」
「ポリタンクにホース付けて水浴び検討中」
「月曜日に出勤したら土曜日まで帰れなくて毎日車中泊です。このままだとどうにもなりません」
「シャワールームでは感染しないと思いますけどね。心配なら中性洗剤とブラシで掃除してから入り、使用後は換気しておけば大丈夫だと思います。ちょっと神経質になりすぎなのでは?」
「あらゆるところのガソリンスタンドのシャワーが使用禁止になってるから、うちの出ずっぱりドライバーはわざわざ車庫にシャワー浴びに戻らなくてはいけない為、車庫のシャワールームが争奪戦になってきている」
「高速を使えないドライバーがウイルスを付けたままトラックの中で睡眠を取れば、自分が拾ってきたウイルスに自分が感染するリスクが高くなる。人手不足の中、ドライバーに感染が広まったら日本の輸送が崩壊してしまう」
東京などで出された休業要請の中には、娯楽性の高い「スーパー銭湯」は対象となったが、「銭湯」は含まれなかった。「社会生活の維持に必要な施設」と判断されたからだ。
長距離のトラックドライバーは先述通り、長い時だと1か月もの間家に帰れないケースもある。高速道路のサービスエリアやパーキングエリア(SAPA)にもシャワールームがあるところはあるが、
「そもそも高速道路に乗らない」
「SAPAのシャワーは有料がほとんどで、毎日入るとなると大きな出費になる(だいたい200円/9~10分)」
「ガソリンスタンドは必ず寄るところ」
「汗をかいた作業の後でもすぐに立ち寄れる」
などという理由から、やはり全国に点在するガソリンスタンドのシャワールームは、彼らにとってその「社会生活の維持に必要な施設」そのものなのだ。