自動表情分析アプリは、オンライン面接でどの程度の効果を示すのか

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表情分析アプリ「心sensor」を実験した様子

清水建二の微表情学<第101回>

 こんにちは、微表情研究者の清水建二です。  近年、国内外の様々なメーカーが自動表情分析アプリを開発し、新しいビジネスを展開しています。これまで自身の目と手を使って表情分析を行ってきた表情分析の専門家らにとっては、膨大な時間を費やす表情分析の手間が省かれ、心理分析に傾注することができます。  したがって、ビジネスマンや研究者は、こうしたアプリの応用可能性に大いに期待し、長短を把握しながら、日々試行錯誤をしています。  そこで、今回は「心sensor(※1)」という表情から感情を認識するアプリケーションを使って、その活用可能性について考えたいと思います。

面接でくるくると変化する求職者の表情をどうとらえるか?

 最初に私が思いついた活用法は、採用面接の場面です。下記の動画は、印象に残った2つの出来事について語ってもらっている場面です。心sensorを使って表情分析してみました。約3分の動画です。ご覧ください(※2)。  前半の約1分30秒ではアルバイト時代の出来事について、後半の約1分30秒では有名な先輩俳優との思い出について語っています。左下のグラフを見ると、対象者の表情変化が時系列で変化する様子がわかります。  この対象者が求職者で、みなさんが採用面接官だとします。面接官のみなさんは、これまでの印象的な出来事や体験を質問しています。そこからこの求職者の性格や資質を判断しようとしていると仮定します。このとき、この表情変化という情報をどう利用しますか?  喜び表情がたくさん生じている箇所についてもっと聞く?  ネガティブな表情が生じている箇所に注意する?  後半の話題では表情反応が乏しいゆえ、後半の話題についてもっと聞く?  表情と言葉から、心理を推測する?

豊かな表情で話している話題=当事者意識がある話題

 いろいろあり得ますが、どう利用するかは、採用する会社の価値観や基準によるでしょう。特定の専門スキルや性格の有無があるかないかを採用基準にしていない限り、ある人物を偏りなくよりよく知るためには、表情が豊かなところに注目し、話をよく聞く、質問する、というアプローチがよいと、表情分析の観点からアドバイスすることが出来ます。  私たちの感情はよりよく生きるためにあります。失敗を恐れなければ、予防策を講じることが出来ず、同じ失敗で身を亡ぼすでしょう。不正されることに怒りを感じなければ、損ばかりする人生になってしまうでしょう。  何かを成し遂げることに喜びを感じなければ、頑張るモチベーションを保つことは出来ないでしょう。どんな感情・表情でもよいのです。喜び表情でなくても構いません。ネガティブな表情でもよいのです。全部まとめて、表情が豊かならば、その話題を大切に思っている可能性が高いと考えられます。  つまり、ある人物が感情的になるということは、その人物が生きるために重要だと思っているからであり、もっと言えば、自分事、当事者意識が強いからこそ、そうなるのです。  そして、抱いている感情が強いほど、表情筋の動きも強くなることが知られています。これらの理由から、求職者が表情豊かに話している話題について深堀して話を聞くことを推奨するのです。
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表情の豊かさから、深堀する話題の優先度を決める
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