コロナ休校で注目を集める絵本の読み聞かせ動画。同時に浮上する著作権侵害問題の深刻さ

読み聞かせイメージ

aijiro / PIXTA(ピクスタ)

学校自粛で絵本の読み聞かせ動画が流行るが問題も

 新型コロナウイルスの影響は続いている。経済活動の自粛要請だけでなく、小学校の自宅待機が大きな影響を社会に与えている。また普段、保育園に子供を預けている家庭で、子供を家に待機させているところもある。子供が家にいる家庭では、何とかして子供を大人しくさせて、その隙に仕事を進めている。  なかなか大変なのは、飽きやすく仕事の妨げになる子供に、どういったコンテンツを与えるかだ。その解決方法の一つとして、Youtube に上がっている絵本の読み聞かせ動画に注目が集まっている。しかし、これらの多くは著作権侵害の問題を抱えている。2017年から2018年にかけて話題になったマンガ海賊版サイト「漫画村」のような違法コンテンツなわけだ。  絵本の読み聞かせ動画が、著作権を侵害していることは以前から問題になっていた。それが今回のコロナ自粛によって、大きくクローズアップされるようになった。  一般の人が無許可でアップロードしている絵本の読み聞かせ動画の多くは、著作権を無視している。中には絵本をそのまま撮影して、読み上げているものもある。これらは本の中身を全て見られる状態だ。もちろん、読み上げ自体も、著作権者の許可が必要な行為だ。アップロードしている本人は犯罪の自覚がないのかもしれないが、いつ訴えられてもおかしくない。  動画サイトには、実は紙の本を撮影した違法動画がよく上がっている。著作権者の許可を取っていない絵本の読み聞かせ動画だけでない。マンガもその対象だ。今回は、新型コロナウイルスの流れで話題になった、絵本の読み聞かせ動画に絞って、最近の動向を振り返ってみようと思う。

絵本読み聞かせ動画問題の広まり

 今回のコロナ禍で、絵本を出版している会社は、問題についての情報発信をしている。『だるまさん』シリーズで有名なブロンズ新社では、4月10日の時点で、違法動画や違法グッズに対して何が問題なのかをマンガでまとめた【大切なお願い】ツイートを公開している。  この流れを受けて、4月15日には BuzzFeed にて『「好きだから」こそ思いとどまって。“愛ある”著作権侵害に悩む、絵本出版社の嘆き』という記事が公開される。この記事では、上記のブロンズ新社の『だるまさん』シリーズを取り上げて、Youtube の違法動画や、メルカリでの違法グッズの問題を紹介している。同記事では、弁護士のコメントとして「刑事上は10年以下の懲役・1000万円以下の罰金刑」という法律も紹介されている。  この翌日、4月16日には、『ぐりとぐら』や『ねないこだれだ』などの絵本で有名な福音館書店が『絵本の読み聞かせ動画配信についてのお願い』というページを公開した。こちらでは、読み聞かせの動画配信をおこないたい場合は、利用を希望する作品を事前に申請するようにと案内が書かれている。  申請のあった作品については、著作権者に意向を確認して返信をするそうだ。出版社の手間を考えると頭が下がる。当然、希望に添えない可能性もある。どのような方針で、この問題に向き合うかは出版社によってそれぞれだろう。いずれの場合も、手間が掛かるので出版社側の負担になる。  4月20日には、こうした絵本の読み聞かせ動画の問題は、『“読み聞かせ動画の無断公開やめて” 出版各社が呼びかけ』という形で、NHKでも取り上げられた。問題は、各出版社個別の問題から、全国ニュースにまで発展した。出版社が声を上げたことで、大きな社会問題として認知されたことになる。
次のページ
適正な絵本読み聞かせ動画を利用しよう!
1
2