「漂白剤がコロナに効く」デマは死に至る危険性も。内服薬以外の化学薬品は飲むな食べるな混ぜるな

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最悪の事態へと動きつつある新型コロナ禍

 現在本邦は、SARS-CoV-2(新型コロナウィルス;新型コロナ)による感染症COVID-19(コヴィッド19)の急速なパンデミックが明らかとなり、騒然とした状況にあります。  筆者は、元々呼吸器系に既往症があり、更にFlu-Shot(インフルエンザ予防接種)によって一月くらい体調を大きく崩すのでFlu-Shotができないため、年末から2月末までは外出を殆どしなくなります。こういったなか、12月からBBC World NewsとCNNの視聴を1年ぶりに再開していたところ、かつてのSARS(重症急性呼吸器症候群)を彷彿とさせる感染症が世界で蔓延しはじめ、しかもそれがSARSやMERS(中東呼吸器症候群)と同じく新型コロナウィルス(当時はDeadly Coronavirus; 致死性コロナウィルス)と報じられるに及び、死にたくないので1月からほぼ完全に立てこもり態勢に移行しています。筆者は、この状態が少なくとも第一波が8月いっぱいまで、その後も断続的に治療法が完成するまでの数年間は全世界で継続するという前提で行動しています。  さて、人類にもネコ族*にも抗体が無く、ワクチンも無く、治療法も無い感染症が社会に蔓延すると様々な珍説や嘘が同時に蔓延します。「PCR検査をすると医療崩壊する」という理屈が全く成り立たない国策翼賛デマゴギーがその最たるものですが、ようやく4月も第3週末になって完全に破綻しました。このツケは極めて大きく、これから大勢の命で払うことになりかねません。 〈*”新型コロナ、猫にも感染の可能性 「心配は不要」と専門家”2020/04/03 CNN:人→獣感染が確認された。獣→人感染は現時点では未確認に過ぎない、”トラが新型ウイルスに感染、米ニューヨークの動物園で”2020/04/06 BBC:人→獣感染が生じ、さらに獣→獣感染の可能性もある〉  本邦は、SARS-CoV-2感染者数の統計が極めて特異な傾向を示し、Bloombergなどの外電では信用のできない統計として日本は統計から削除され、BBCやCNNでも「極めて過少な検査数による(実態からかけ離れた)数値である」と注釈されるなどしてきましたが、そのような状態を継続しつつも遂に4/18に韓国の累計感染者数を超え*、中国の累計感染者数を伺う状況にあります。これは、本邦がイタリア、ロンバルディア地方や合衆国NY州のような深刻な状況になる可能性を強く示唆しています。 〈*”国内感染者1万人超える 9日で倍増、歯止めかからず―新型コロナ”2020/04/18時事通信:ダイアモンド・プリンセス号の感染者数を除いた人数である〉  流言蜚語の中に、「●◎をすればコロナにかからない」と言うものがあります。意味のないことをすることは、感染症を拡大させないことの支障になるのですが、なかには命を直接脅かすものもあります。そういったものの一つに「漂白剤を飲むとコロナにかからない」というものがあり、BBCやCNNでも時々たいへんに危険な流言蜚語として取りあげられます。

次亜塩素酸を飲んだ実例

 BBCやCNNで漂白剤(主に次亜塩素酸)を飲まないようにという注意が流れているのを、「不味いな」と思っていたところ、去る2019年参議院議員選挙と今年二月の前橋市議会議員補欠選挙でNHKから国民を守る会から立候補されたM氏が、次亜塩素酸ナトリウムを飲んで、救急病院に駆け込んだという話が入ってきました。  幸いにして胃の痛みに苦しみながらも自力で救急外来に駆け込み、毒物専門で説明を受けただけで帰され、命に別状は無かったとのことです。  日本のネット風物詩ですが、このような失敗談には、マウント大好き人間が殺到して、悪罵の限りを尽くしますが、そこには醜さ以外、何の教訓も残りません。  さて筆者の学問人としての原点はChemist(化学者)です。とくに筆者の場合、ダイアモンドやサファイアなどの鉱物を溶かすことに特化しているために、危ないことが大好きです。また筆者が学生時代の大阪大学理学部化学教室には、分析化学講座という珍しい講座があったために人体を痕跡残さず完全に溶かす方法など池田重良先生直伝のアブない処方がノートに残っていたりします。  化学者は、かなり怖い薬品を素手で操作しますが、薬傷をすることは珍しく、中毒を起こすことはたいへんに希です。これは何が危ないか、何をすると危ないかを熟知しているためで、その為に大学の化学系教室では学部時代に失敗経験を十分に積ませる考えで実験カリキュラムが設計されていることが多いです。学部時代に火傷はザラで、衣服に火が付いて燃え上がったり、ガラス管で掌を突き破ったり、工作機械で指を切断したり(手術でつながった)、猛毒ガスを発生させたりと、100匹の羊(学生)が、牧童(教官)の手を焼かせたものでした。そこでは叱責ではなく教育がなされ、学生は失敗の教訓を骨身に染みさせることとなりました。筆者はここで、叱責や侮辱は、教訓につながらないことを学びました。  薬品の誤飲事故は、かなり珍しいものですがやはり完全に阻止できるものではなく化学同人「実験を安全に行うために」シリーズ(赤本)(青本)に記載されているように、青酸カリの誤飲*という致命的な事も生じています。 〈*シアン化カリ(KCN)を使う実験の合間の休憩でお湯のみでお茶を飲んだところ、視野が暗くなり気を失った。失神寸前に「青酸カリ!」と叫んだために救急搬送され、一命を取り留めた。実験後に手を洗わなかったことが原因〉  さて、M氏が誤飲した次亜塩素酸ナトリウムですが、量によっては飲んだら死にます。たまたま飲んだ量が致死量に至らなかっただけで、たいへんに危険です。また次亜塩素酸は家庭における誤飲事故の王様と言えるほどに誤飲が頻発しています**。 〈**”高齢者の誤飲・誤食事故に注意しましょう! -医薬品の包装シート、義歯、洗剤や漂白剤の誤飲が目立ちます”-2019/09/11消費者庁”漂白剤やポット洗浄剤を使用中の誤飲事故 日本中毒情報センター”〉  誤飲事故の多くは、そのまま消化できないものとしてうんこと一緒に体外に排泄されますが薬剤の場合は、消化器内で化学反応をして死に至らしめたり、長期的には肝臓などに蓄積して癌の原因になったりします。
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おなかの中で何が起きるのか
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