国民がコロナ禍で苦しむ中、火事場泥棒的に保身のための法案成立を急ぐ安倍政権。検察庁法改正案の問題点とは?
ことの発端
国家公務員法の規定
“第八十一条の三 任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。 ○2 任命権者は、前項の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、前項の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、一年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、その期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して三年を超えることができない。”要約すると、こうなる。 ①「退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるとき」は、最大1年延長できる。 ②この理由が引き続き存在するときは、延長を繰り返せる。 ③延長を繰り返しても、定年退職日から3年が限界。 つまり、最大3年勤務延長できるという規定である。そして、延長の理由となる「退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由」は、人事院によると、下記のとおりである。 ●定年退職予定者がいわゆる名人芸的技能等を要する職務に従事しているため、その者の後継者が直ちに得られない場合 ●定年退職予定者が離島その他のへき地官署等に勤務しているため、その者の退職による欠員を容易に補充することができず、業務の遂行に重大な支障が生ずる場合 ●定年退職予定者が大型研究プロジェクトチームの主要な構成員であるため、その者の退職により当該研究の完成が著しく遅延するなどの重大な障害が生ずる場合 そして、政府は今回の勤務延長の理由について、要約すると「東京高等検察庁菅内において遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査公判に対応するためには、黒川氏の豊富な経験・知識に基づく指揮監督が必要不可欠」と言っている。山中理司弁護士がツイッターにて勤務延長に関する閣議書を公開しているので引用する。
しかし、この理由が人事院の挙げている具体例と同じレベルに無いことは明らかである。「重大かつ複雑困難事件」が具体的に何を指しているのかも分からない。そして、どんな事件であろうと、捜査・公判は現場の検事が担当しているのだから、検事長が変わって支障が出るはずがない。そもそも今まで一度も議論すらされなかったこと自体、検事長の勤務延長が不要であることを示している。 このように、「根拠としている法律の要件を満たしていない」という問題もあるが、その前に、「そもそもこの国家公務員法の勤務延長規定を検察官に適用できるのか」という問題があった。黒川弘務東京高検検事長の勤務延長に関する閣議書(令和2年1月31日付)を添付しています。 pic.twitter.com/zn9gJkf0Ou
— 弁護士 山中理司 (@yamanaka_osaka) April 13, 2020
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