日本政府は遅ればせながら4月7日に108兆円の緊急経済対策を盛り込んだ2020年度補正予算案を閣議決定したが、16日になって突如、目玉の現金給付策を修正。補正予算の組み換えを経て、経済対策がさらに先延ばしになりそうな状況だ。
それに対して、香港政府の経済対策は早かった。
2月14日に250億香港ドル(約3600億円)の経済対策を発表し、中小企業支援を中心にさまざまな対策を盛り込んだ。また、2月26日には、財政予算案も明らかにした。
18歳以上の永久居民に1人あたり1万ドル(約14万円)の支給するほか、個人所得税・法人税について上限を2万ドル(約28万円)として100%減免する措置するという内容になった。また、
オフィスや工場といったところの電気代は5000ドル(約7万円)を上限に4か月間75%を補助し、水道代は2万ドル(約28万円)を上限に4か月間75%を補助する。
振り返ってみると、安倍首相が小中高の一時休校を発表したのは、2月27日のことだった。香港の事例を参考にした可能性もあるが、香港が休校措置を取ったのは1月25日と、日本よりも1か月も早かった。前述のとおり、日本の新型コロナ用の経済対策はいまだに成立しておらず、国民の生活を守るための対策して間もなく実現しそうなものは、
「布製のマスク2枚の配布」ぐらいだ。この対応の遅さは、他の先進国と比較てしても際立つ。
香港市民に聞くと「
香港政府が日本政府のようなスピードでしか経済対策を打ち出せなかったら、感染リスクを厭わず大規模な抗議活動が起きていただろう」と話すが、まさにそのとおりだろう。
2003年に香港でSARSを経験した筆者にとって感染症の経験は単なる悪夢でしかない。効果的な治療法が見つからぬまま、無辜の市民が次々と亡くなっていくことほど恐ろしいものはない。
結局のところ、未知のウイルスに直面したときに講じられる有効な対策は都市封鎖などに限られる。医療よりも政治の果たす役割が大きいのだ。
その点、安倍政権がすべてにおいて後手に回ったのは間違いない。ダイヤモンドプリンセス号内での感染拡大に対して、
中途半端な水際対策をとったことがそもそもの始まりだ。その後、中国・韓国からの入国を制限したのは、3月9日のこと。直前に、4月に予定されていた習近平国家主席の来日延期が発表されたことからわかるように、中国への配慮から入国制限措置が遅れたのだ。
緊急事態宣言を発出したのは、それからさらに1か月後。中国への忖度ぶりは香港も同様だが、少なくとも日本の1か月前に中国からの入境に制限をかけたのは前述のとおり。仮に、日本が香港以上に厳しい対策を施したマカオのように即座に中国からの入境制限を行っていたら、緊急事態宣言にまで発展しなかっただろうと予想される。福島第一原発で失敗した民主党も、新形肺炎で失敗した自民党も緊急事態での対応能力という意味では同じレベルだったことだけはわかっただろう。
<文・写真/武田信晃>