新型コロナで議員歳費カットは単なる「やってる感」アピール。そんなにやりたきゃコロナ収束後にここを見直せ

国会

wpo / PIXTA(ピクスタ)

国会議員の給与2割削減の与野党合意

 与野党の国会対策委員長は、今後1年間、国会議員の給与を2割削減することで合意しました。朝日新聞の報道によると「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、自民党の森山裕、立憲民主党の安住淳両国対委員長は14日午前、国会内で会談し、議員歳費の2割を削減することで合意した。当面1年間の措置とする見通し。今月中にも議員立法として成立をめざし、5月分の歳費から適用したいとしている」とのこと。その背景には「自民党の二階俊博幹事長が「コロナウイルスと戦う国民を、しっかり支援したい」と前向きだったほか、野党からも削減の考えが示されていた」ことがありました。

そもそも国会議員の給与=歳費の意味とは?

 まずは、この是非を考える前に、国会議員の給与について確認しましょう。国会議員の給与は「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」で決められ、歳費と呼ばれます。2019年現在、一人当たり年間21,813,604円(議長36,580,774円、副議長26,702,280円)です。これを2割減らすと、年間17,450,883.2円となります。  国会議員は、歳費の他にも、様々な手当や便宜を国から受けています。よく知られているのは、活動経費に相当する文書通信交通滞在費の年1,200万円。移動経費に相当するJRパス・航空券の交付。公設秘書3人の給与・通勤手当等。議員会館の事務室の割当や都内の議員宿舎の割当もあります。また、議員個人でなく、所属会派に支給される立法事務費が年780万円あります。  国会議員の手当や便宜で、あまり知られていないものは、役員手当や委員派遣旅費です。役員手当とは、議長や副議長、委員長、調査会長に、開会中の毎日支給される、日額6,000円の手当です。年間200日開会すれば、年額120万円となります。役員には、個室と秘書、専用車も付きます。委員派遣旅費とは、公務で国会外に派遣された時の日当で、交通費と別に日額2万円程度が支給されます。  また、政府の役職に就任した場合は、役職の給与と国会議員の給与の差額が支給されます。内閣総理大臣であれば、年額約4,000万円(就任時期や諸条件で変化する)と国会議員歳費の差額、約1800万円を支給されます。同様に、国務大臣は約2,900万円、副大臣は約2,800万円、大臣政務官は約2,400万円となります。大臣給与のカットという話をしばしば聞きますが、その場合、国会議員歳費との差額を何割か、カットしています。全額ではありません。  国会議員に歳費が支給される理由は、所得の低い人が議員になることを想定しているためです。明治時代、帝国議会が創設された当初は、富裕層だけが議員になれましたので、歳費は安く、あくまで活動経費として考えられていました。日本国憲法は第49条で「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける」と定め、誰もが国会議員になることを所得面でも保障しています。そして、国会法は第35条で「一般職の国家公務員の最高の給与額より少なくない歳費を受ける」として高額の歳費を定め、所得の低い議員が不当な圧迫を受けないようにしています。 要するに、国会議員の高額の歳費は、所得の高低によって国政が不当に左右されないよう、予防する仕組みなのです。
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