病院では、何かの症状が出ても我慢する“受診控え”が起きているという。香山氏は「日本の医療が崩壊したとしても、それはその人のせいではないから、具合が悪くなったら病院に行っていい」と話す
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私は私立大学の文系学部教員だが、もともとは医師だ。「知ってる。精神科医だろ」と言う人もいるかもしれない。新型コロナウイルス感染症が社会問題になってから、通常の診療のほかに「コロナ関連SNS心の相談」の事業に関わっており、ほぼ毎日、コロナから派生した無数の不安や悩みの相談のスーパーバイザーを務めている。
そして実はこの数年、個人的な事情により身体的な医療の学び直しをしている。その現場ではコロナ感染症そのものにも関わる機会がある。
そこで今回は、ニュース解説ではなく、ひとりの医師として読者に伝えたいことを書かせてもらいたい。
それは、「
COVIDー19(コロナウイルス感染症)を甘く見るな」「幸運にもまだ感染していない人は、まず自分を守ることを最優先としろ」ということだ。「心の相談」には「コロナかと不安です」「予防しすぎかと逆に心配になります」という人の声が寄せられるが、今では私は、心の中で「たしかに誰もが感染しているかもしれないし、
予防しすぎということはない」とひそかに思っている。
新型コロナウイルスに感染している人は、検査で陽性と判明した数の何倍、何十倍も存在する、というのが臨床の場で多くの医師が実感していることだ。ただ、これまでは検査のハードルが高い(保健所に連絡して交渉して、など手続きが厄介)、もし陽性だったとしても呼吸管理以外の治療ができるわけではないなどの理由から、検査にまで至る例が少なすぎたのだ。
そして今、検査数が増加し陽性と判明するケースが急激に増えており、東京の公的病院、大学病院で用意されている“コロナ病床”は早くも満床になりつつある。また、コロナ入院者の治療には多くの人手が必要となるため、各科から医者が駆り出され、ほかの病気への対応が手薄になりつつある。