受刑者を積極的に雇う企業のネットワークが北海道で広がる

課題は、企業同士の横のつながりを増やしていくこと

参加企業一覧

北海道の職親プロジェクトへの参加企業一覧

 もちろん課題もある。31社のなかには、実際に少年院や刑務所に複数回入所した経験をもつ社長も複数人いる。その一人であるA社長はこう話した。 「職親プロジェクトは、『みんなで一つの会社』として考えなければなりません。つまり、出所者が『建設業が合わない』からと辞めそうなときは、じゃあ『大阪の千房(前出)とかに行く?』とかを勧める。だから、どこで働くかの入り口はどこでもいい。みんなでやる。その姿勢が大切です。  そのために必要なのは、参加企業同士の付き合い。それがなければ、出所者の道は絶対に途切れる。31社集まったとはいえ、まだ単なる『点』の集まりです。まずは点と点を繋ぎ、今後それを『面』というネットワークとして運営するためにも、定期的に話し合う必要がある」  おそらく今後、企業単体で職親をマイペースでやりたい企業と、A社長のように『みんなで一つの会社』として動きたい企業との意見のすり合わせが行われるはずだ。話し合いといっても、広い北海道で全企業が一堂に会するのは難しい。そこで北海道では、西北海道の職親企業は中川社長が窓口となり、東北海道では「ドリームジャパン」(帯広市)の長原和宜社長が窓口となる。
長原和宜社長

長原和宜社長

 実は今回の31社のうち半数以上の18社が北海道東部にあり、それをまとめたのは長原社長だ。長原社長は覚せい剤使用で逮捕され、周囲を不幸にした過去がある。そこから多くの人の支えで立ち直っただけに、今度は自分がと、2015年から出所者を雇用しているだけに職親プロジェクトに賭ける思いは強い。集会ではこう断言した。 「私の夢は、帯広地域の職親企業と連携して出所者の雇用を広げること。そのためにも、今後は、根室市、網走市、北見市にも職親企業を増やすよう奔走します」  北海道で始まったばかりのこの取り組み。新型コロナウイルス収束の見通しも不透明で、おそらく山あり谷ありになるが、今後随時情報収集をして報告したい。 <文・写真/樫田秀樹>
かしだひでき●Twitter ID:@kashidahideki。フリージャーナリスト。社会問題や環境問題、リニア中央新幹線などを精力的に取材している。『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社)で2015年度JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞を受賞。
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