円安で庶民はダメージだが、政府は利食いの好機

’12年秋から始動した円安トレンドに連動して日本株価が大幅上昇した。輸出製造業の円安メリットは絶大だが、庶民は物価高で実質賃金が目減り。陰陽相半ばする円安だが、日本政府は54兆円の損失回収の千載一遇のチャンスを迎える。

円安の陰と陽。庶民は悲鳴も、政府は利食いの好機到来!?

(政治経済学者 植草一秀氏)  円安で喜ぶ企業と悲しむ庶民。外国人観光客は満面の笑みで買い物に興じるが、日本の庶民は給料や年金が減るなかで、物価と税金が上がり、生活の苦しさは増すばかり。  安倍首相は労働者の賃金が増えているようなことを言っていたが、’04年11月の労働者の現金給与総額は前年比で1.5%も減少した。消費者物価上昇率は2.4%で、実質賃金は前年同月比で3.9%も減少している。  賃金が増えたのは、昨年7月のボーナス月だけだった。これが例外で、あとは実質賃金の下落がずっと続いている。  それでも、日本を代表するような大企業に安倍政権は最高に優しい。円安で企業利益は激増。消費税も輸出企業には巨額が還付される。さらに、消費税増税で税収が増えた分を、大企業には法人税減税で配分しているのだ。  弱い者には犠牲になってもらい、大資本には我が世の春を謳歌してもらおうというのが安倍首相の方針のようだ。安倍首相は正月からゴルフ三昧だったが、一緒にプレーする人々は、やっぱり輸出大企業の経営者ばかりだった。

財政健全化のためにも消費税再増税は中止!

 円安で日本の経済地位は凋落している。一人当たりGDPの水準は世界のトップ10に入っていたのが、あっという間に20位にも入れない状況に移行している。  円安は日本の資産が外資に買い占められる状況を生み出す原因にもなる。そろそろ円安に歯止めをかけないと、円安の「陰」の側面が噴出してくるだろう。  だが、その前にやっておくべきことがある。政府のドル資産をドル高の間に、確実に売却することだ。日本政府は米国国債などを1.3兆ドルも保有している。  ’07年6月末に113兆円分保有していたが、その後の4年半に39兆円買い増しした。合計152兆円注ぎ込んだことになる。 ⇒【後編】「安倍政権は米国債を売却せよ」に続く http://hbol.jp/21667 【選者】植草一秀氏 シンクタンク主席エコノミストなどを経て、現在はスリーネーションズリサーチ(株)代表取締役。ブログは「植草一秀の『知られざる真実』」。近著に『日本の奈落-年率マイナス17%GDP成長率衝撃の真実-』(ビジネス社)
日本の奈落

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