コロナウイルスによるイベント・会議等の中止は、私にとっても他人事ではありません。専任の大学教員は給与生活者で関係ないと思われがちですが、私の場合、昨年4月にフリーランスのコンサルタントから教員になり、フリーランスの仕事も継続しているためです。2月末から講演や研修、会議などが中止となり、3月はほとんど空白、4月は完全に空白となりました。もちろん、その分だけ減収となります。
新型インフルエンザ等対策特別措置法の実効性は、政府の補償にかかっています。コロナウイルスの感染対策として、人為的に社会活動を抑制しているわけですから、その分を政府が補償しなければ、当事者は経営苦・生活苦になるか、それを避けるために活動を決行するか、二者択一を迫られます。よって、海外では、公権力による規制によって行動を変えてもらうのですが、この特措法では、資金力による補償によって行動を変えてもらうのです。
「自粛と補償はセット」が特措法の趣旨です。
それだけに、
政府の緊急経済対策に、どのような補償策が入るのか、注目していました。社会活動を抑制しても、経営苦・生活苦にならないかどうかが、注目点です。
とりわけ、
社会活動の抑制によって、経営・生活を直撃されるフリーランス(自営業者・個人事業主を含む)への補償策がポイントになります。大企業・中堅企業に比べ、相対的に資金力の弱い自営業者・フリーランスは、補償策がなければ、たちまち経営苦・生活苦に陥ります。そのため、多少の無理をしてでも、仕事をせざるを得ません。
フリーランス対策が、安倍晋三首相が緊急事態宣言で目標とする7~8割の接触機会減少の成否を占うといっても、過言ではないでしょう。
安倍首相によると「人と人との接触機会を最低7割、極力8割、削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます」とのことですから、フリーランスへの補償策は、対策全体のカギを握るといってもいいでしょう。
まず、
政府がフリーランス向けに整理した支援策を見てみましょう。
首相官邸ホームページのトップから「生活と雇用を守るための支援策はこちら」をクリックすると「
生活と雇用を守るための支援策」に移ります。ページをスクロールすると「2(2)」の一つ目の「・」に「こちらに、中小・小規模事業者、個人事業者向けのパンフレットをまとめました」とあり、クリックすると、経済産業省の「
新型コロナウイルス関連・経済産業省の支援策」に飛びます。そこに「個人事業主・フリーランス支援」とあるので、さらにクリックすると「
個人事業主・フリーランス支援」のページにたどり着きます。
そこには、次の2つの支援策が並んでいます。これを見ると、
まともなフリーランス支援策は、子どもの休校に伴う補償しかありません。
● フリーランスと取引する発注事業者に対して、取引上の適切な配慮を行うよう、厚生労働省等が関係団体に要請した。
●
小学生等の子どもがいて、学校休校によって仕事を休む業務委託のフリーランスについて、1日4100円(土休日・春休み等除く)を補償する。
それでは、
他の支援策が使えないのか、経済産業省の「
新型コロナウイルス関連・経済産業省の支援策」に戻りましょう。そこに「
支援策パンフレット」があるので、クリックします。そこにPDFパンフレット「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」がありますので、補償に相当する支援策があるか、見てみましょう。
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経営相談・専門家派遣
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民間金融機関での信用保証付き融資と保証料補助(業種や減収によって80~100%保証)
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政府系金融機関による無担保融資と利子補給(フリーランスは利子補給の要件なし)
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給付金100万円以内(コロナウイルスの影響で売上が前年同月比50%以上の減少した場合)
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小口融資20万円以内(緊急かつ一時的な生活費等の貸付で、フリーランスは最大20万円)
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納税猶予(2月以降で売上20%減少の場合で、あらゆる税を対象とし、担保・延滞金なし)
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厚生年金保険料の納付猶予(申請が必要)
補償だけでなく、資金繰り支援ということでピックアップしたのが、上の7つです。上記のうち、経営相談・専門家派遣は、資金繰りの入口であっても、資金繰りそのものではありません。融資・利子補給・信用保証は助かりますが、審査の手間と時間がどれだけかかるのかが、経理を自ら行うフリーランスにとって肝心です。
納税・納付猶予は、手元のキャッシュが確保できるので、これも助かりますが、審査があるので、その手間等がフリーランスにとって課題です。
これらのうち、
補償に相当するのは、給付金と小口融資のみでした。給付金では、
コロナウイルスの影響と前年同月比50%減少の証明が、フリーランスにとって課題になりそうです。イベントの中止など、直接的な影響であれば証明しやすいでしょうが、取引先の複合的な事情であれば、証明しにくそうです。
小口融資は、やむを得ない場合は返済免除になりますが、原則は返済ありです。フリーランスの綱渡り的な事業環境からすると、免除は容易でなさそうです。
最後に、
個人向けの支援策を見てみましょう。首相官邸ホームページの「
生活と雇用を守るための支援策」を見ると「給付金」「その他」とあります。
個人向けでは、
収入が半減した世帯に1世帯あたり30万円を給付するとのことです。また、半減していなくても、低所得世帯は給付を受けられるそうです。ただ、緊急事態宣言の翌日4月8日において、詳細は決まっておらず、これ以上のことは何も書かれていません。
要するに、
政府全体でのフリーランス向けの補償策は、50%以上の減収に限り、最大150万円ということです。もちろん、フリーランス向けが個人、個人給付金が世帯という違いがありますので、一概にはいえません。また、小口融資も返済困難にならない限り、給付とはなりません。