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世界中でコロナウイルスが蔓延しており、一向に収束の気配が見えない。大作映画が軒並み公開延期と発表されている中、ここで紹介する
『囚われた国家』は予定通りに4月3日より劇場で上映されている、数少ない新作だ。
ただし、本作も公開中止となる可能性もあると公式サイトで表明されており、そもそも土・日に臨時休業となっている映画館も多く、現状を考えれば気軽に観に行ってとは言えないのが正直なところだ。
それでも、万全を期して上映を続ける劇場がある以上は、応援したい、観客側も十分な対策をした上で観てほしいという気持ちもある。何より、この『囚われた国家』は、以前に紹介したゾンビ映画
『CURED キュアード』に引き続き、“起こりうる未来”を警告している、今観るべき社会風刺に満ちた映画だったのだ。ここでは、本作をより楽しむために知ってほしい3つのポイントおよび、作品の魅力を記していこう。
1:兄弟の物語から「従うか」「抗うか」の選択を迫る
本作は「統治者」と呼ばれるエイリアンに侵略された世界での、レジスタンスたちの徹底抗争を主に描いたSF映画だ。たくさんの登場人物が入り乱れる、非常に複雑な作品構造を持っているが、その中で“兄弟の物語”であることに着目するとわかりやすいだろう。
兄・ラファエルと弟・ガブリエルの兄弟は、警察官の両親がエイリアンに虐殺されてしまったものの、九死に一生を得て生き延びる。それから9年後の2027年、反政府テロ事件を起こしたラファエルは行方不明になっており、一般市民であるガブリエルはその足取りを追っていた。
その頃、アメリカ政府は統治者であるエイリアンの傀儡と化しており、居住区を与え、あまつさえ彼らのために天然資源の採掘に協力しているという有様だった。さらに、一般市民は首に埋め込まれたデータチップで日常を監視され、造反者はなんと地球外へ追放されてしまう。そんな中でも日々を懸命に生きている一般市民の1人である弟のガブリエルは、兄のラファエルが再びレジスタンスのリーダーとして、政府主催の団結集会の破壊工作に臨もうとしていることを知るようになる。
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過度な監視社会に対しての「従うか」「抗うか」という国民としての意思および選択を、この兄弟に託して描いている、と言ってもいいだろう。理不尽な圧政を強いられていたり、政府が機能不全の傀儡と化していたりしたらどうするか? もちろん、ただおとなしく従うことも選択肢の1つだが、それでいいのか? 反逆をしなければ解決しない問題もあるのではないか? 兄弟の姿を通して、観客はそう問いかけられるのだ。
また、こうした監視社会に対する反抗(または服従)を描いたSF映画は、『時計じかけのオレンジ』(1971)や『未来世紀ブラジル』(1985)や『ゼイリブ』(1988)など数多い。エイリアンと人間がアンバランスな共存関係を築いている様からは『第9地区』(2009)を連想する人も多いだろう。この『囚われた国家』もそれらの“反抗ものSF”の延長線上に作られた、さらなる発展系と言える作品なのである。