若者を非難する大人は風疹の抗体検査や予防接種を受けているのか
だが、ちょっと待ってほしい。海外での「#コロナ・チャレンジ」や「老害排除運動」といった極端な若者の行動が非難・糾弾されるのはもっともなことだ。しかし、単に「自分とは関係ないこと」「感染してもたいしたことにはならない」などと嘯き外出を続ける若者を非難する資格が大人世代にあるのだろうか。
筆者が想起したのは
風疹にまつわる事象だ。感染症への無自覚や危機感のなさ、そして周知の不徹底はこれまでも風疹に関する問題で指摘されていた。
風疹自体は感染しても合併症を伴わない場合はそのほとんどが軽い症状で済むが、妊娠初期の女性が罹患すると風疹ウイルスが胎児に感染し先天性風疹症候群(CRS)の子どもが生まれる可能性が飛躍的に高まる(風疹のワクチンは生ワクチンのため、妊娠している女性は接種できない)。日本では5年周期で風疹の流行が起こっており、2012〜13年に流行した際は約1万7千人が感染し45人の乳児がCRSにより心臓や視覚・聴覚に障害を負って生まれてきた。2018~19年の流行時には5252人が感染し5人のCRSの乳児が報告された。今年も第12週時点で73人の感染が報告されている。
この最も気遣いが必要な妊娠初期の女性にウイルスの媒介者として風疹をうつしてしまいかねない世代が4月1日現在、
41歳から57歳の男性たちだ。この世代の男性は公的な予防接種の対象外となっていたことから風疹の抗体保有率が約80%と低く、後述する「集団免疫の閾値」に達していない。そのため風疹ウイルスに感染するリスクや媒介となって他者を感染させる可能性が高い。しかし、その重大さや深刻度についてこの世代の男性が正確に認識できているとは思えない。それは
あるクーポン券の利用率の低さに表れている。
この世代の男性には、自治体から風疹の抗体検査と予防接種を受けることができるクーポン券が届いている。厚労省は2019年から3年の区切りをつけて抗体値の検査と(値が低い人には)予防接種を無料で受けることができるよう自治体を通してクーポン券を送付している。これは自己負担額もなく公費で抗体検査や予防接種ができるということだ。にもかかわらず、このクーポン券利用者はまだまだ少ないのが現状だ。
昨年10月に厚労省が発表したクーポン券の利用率は抗体検査が16%でワクチン接種も14%と低く、抗体検査の利用率では数%しか利用していない県もあった。大都市圏においても10~13%と低い利用率に留まっている。
自治体から送られてくる風疹抗体検査及び予防接種の案内
この世代に該当する筆者にも自治体からクーポン券が届いている。しかし筆者は麻疹風疹混合(MR)ワクチンをかかりつけの医療機関で接種済みだ。予防接種は保険が適用されず、クーポン券配布前だったため接種費用の約8千円は全額自己負担だったが、自分がウイルスの媒介者・加害者になってしまわないための対価としてみると決して高い費用ではない。
自治体から届いた風疹クーポン券