タイにおける新型コロナウイルス・非常事態宣言下での暮らしと在タイ邦人にのしかかる不安

政府も給付を検討するが、「助け合い」精神は強い

 幸い、バンコクは在住日本人も多く、また経済力的にタイ人も和食を注文できる世帯が少なくない。デリバリー注文は定期的に入るし、タイ人は助け合いの精神が高いこともベトナムとは違う点だろう。  政府もこの騒動での失業者に給付金を出す動きをしているが、それ以上に民間の助け合いが多い。たとえば、多くのアパートやマンションでは当面、家賃を減額してくれると申し出るオーナーばかりだし、銀行や電気会社も支払いを停止や減額対応してくれる。  ただ、これも、この状況が4月30日で終わるとみな信じてのことで、これ以上長引けばどうなるかはわからない。在住日本人も不安は大きく、日々在タイ日本大使館の情報に注目している。

不安要素は徐々にのしかかってくる

 医療費などの問題から日本への帰国を選択する人も少なくない。しかし、日本政府がタイからの帰国の場合自主隔離を要請し、その隔離場所は帰国者本人が確保しないといけないそうだ。ところが日本のホテルもタイ帰国とわかるや宿泊拒否をするようになり、最早日本人も日本に帰ることすら困難になっている。そもそもタイ国際航空は最長で10月下旬まで日本行きを運休しているし、日本の航空会社もかなり減便している状態だ。帰国は容易ではない。  こういった不安要素が海外在住者にのしかかっていて、余裕がなくなる人が増えてくるだろう。タイ人も同様で、精神的不安定や経済的困窮による治安の悪化も避けられない。仮に4月末に非常事態が終わっても、タイはしばらく厳しい状況になりそうだ。 <取材・文・撮影/高田胤臣>
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
1
2
3