パチンコホールの禁煙化によって、喫煙する遊技客がパチンコを止めるのではないかという憂慮があるという声もまま聞くが、自店だけが禁煙化する訳ではないので、多くのホールでは客数が大きく減少することは無いであろうと考えている。
4月1日からのホール禁煙化において、パチンコホールが考えるホール側のメリットとデメリットは取材をした限りでは以下の通り。
【メリット】
① 休眠ユーザーや新規ユーザーの来店動機を拡大することが出来る。
② 煙草に関連する業務の軽減による効率化が図れる。
③ 新卒採用やアルバイト採用におけるデメリットを払拭出来る。
ざっと説明すれば、①や③は、「タバコ臭い」、「服や髪に匂いがつく」と言われた、パチンコ店が敬遠される大きな理由の一つが解消されることにより、現状よりも少なからず改善されることは間違い無い。特に③の採用に関しては、サービス業の人材不足が叫ばれる昨今、比較的時給の高いパチンコホールが、求職者の選択肢の中に入ってくる可能性は高まる。
②に関しては、実際のところ、灰皿の清掃や空調設備への投資等、遊技客の喫煙によって生じていた業務営業コストの削減が図れる。日に日に厳しさを増すパチンコホールの営業にとって、この削減から得る金銭的なメリットは小さくない。
逆にデメリットは何か?
【デメリット】
① 喫煙者が遊技台から離席する時間が長くなる。
② 禁煙化の周知がなされていない客等とのトラブル。
③ 喫煙スペース設置や増設のコスト。
一般には余り理解されていないのが、①の「
遊技客の離席時間」である。仮に喫煙する遊技客が1時間に煙草を2本吸う場合、1時間で10分から15分間、遊技を止め、席を離れる。この遊技客が本来3時間遊技していた場合、30分~45分間、遊技をしていない時間が生じる事になる。パチンコホールにとって、この稼働時間の減少は本音では痛手だ。だから大型店舗や大手チェーン店等では、ホール内の至る所に喫煙スペースを設置し、遊技客の離席時間を最小化する工夫がなされている。またホールによっては、「喫煙中カード」なるものを準備し、遊技客が喫煙するために離席する際には、このカードを遊技台の上に置いて離席することを推奨しているところもある。これは、ホールを巡回しているスタッフが遊技客の離席理由を把握するという目的もあるが、遊技客自身に、「10分以内」に戻ってくるように意識付けをさせるためのものでもある。
問題は②だ。パチンコホールの禁煙化を知らない遊技客が喫煙した場合、ホールスタッフは喫煙スペースでの喫煙を促すだろう。禁煙化を知らない遊技客からすれば、「昨日までは吸えたのに!」と不快に感じる場合もあるであろうし、それがトラブルに発展しないとも限らない。また前述の「喫煙中カード」には「10分間」と書かれているのに、遊技客が2本~3本の煙草を吸ってしまい、20分程度離席していれば、場内アナウンス等で遊技台に戻る事を促されてしまう。これも一部の客にとっては不快なことであろう。まして負けていればなおの事。パチンコホール側でも、このようなシチュエーションに対する接客について、いくつものパターンを想定しているが、実際に禁煙化当初は様々なトラブルが起こり得る。ちなみに③は言わずもがな、割愛する。
2020年4月1日からの、パチンコホール禁煙化は、パチンコ産業の長い歴史においても大きな転換点になる。パチンコと煙草はセット。そういう業界関係者やファンもいるが、これも時代の流れ。
時代の変化に対応出来れば生き残る事が出来るし、頑なに変化を拒めば衰退する。
それが世の常である。
<取材・文/安達夕>