WebでGoogle、クラウドでAmazonの後塵を拝したMicrosoftが開発者コミュニティでは巨大な陣地を築き上げつつある

開発者コミュニティを押さえるMicrosoft

 今回、npm を獲得した Microsoft だが、開発者向けの様々なソフトウェアやサービスを保有している。そのいくつかを見ていこう。  Visual Studio Code という、コードエディターは、プログラマーの評価が高く、近年大幅にユーザーを増やしている。初リリースが2015年だが、既に開発者のあいだには広く浸透している。  元々 Microsoft は、開発者向けのツールを長く出してきた歴史がある。統合開発環境である Visual Studio は、1997年からの歴史あるツールだ。同社はこの方面で、多くのノウハウを持っている。  近年普及が目覚ましいプログラミング言語 C#(シーシャープ)も Microsoft によるものだ。同じく同社の .NET Framework 上で実行され、様々な環境で動作する。今後、その利用領域は拡大していくだろう。  開発プラットフォーム、開発者コミュニティ、開発ツール、プログラミング言語、実行環境など、開発に関わる多くの領域を押さえている Microsoft は、何を目指しているのか。  .NET Framework のページには、「Web、Windows、Windows Server、および Microsoft Azure 用のアプリを作成するための開発プラットフォームです」と書いてある。この Microsoft Azure が肝だろう。Microsoft のクラウド プラットフォームだ。  クラウドと言えば、Amazon が首位を独走していることが、よく知られている。40%ほどのシェアを誇っているが、近年伸びは止まっている。その Amazon を追い上げているのが Microsoft だ。2016年には10%を切っていたシェアが、2019年の後半には20%に迫っている。Amazon の約半分、Google の約2倍のシェアだ。  仮に、GitHub に上げたコードを、ワンクリックで Azure で実行できるとどうなるか。開発が非常に楽になる。開発者は、第一の選択肢として Azure を選ぶようになるだろう。そうした連携を、Microsoft は徐々に進めている(Microsoft Azure)。  これから数年で、クラウドのシェアは大きく変わるかもしれない。クラウド企業へと舵を切っている Microsoft は、今後も着々と手を打っていくだろう。 <文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。2021年2月には、SBクリエイティブから『JavaScript[完全]入門』、4月にはエムディエヌコーポレーションから『プロフェッショナルWebプログラミング JavaScript』が出版された。
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