韓国では、真夜中にゴミ拾いをする老人の姿は珍しくない。生活のため飲食店を深夜まで開いている高齢者や、独居老人も多い
若い芸能人の自殺が目立つ韓国だが、高齢者の自殺率も世界トップクラスだ。韓国政府が発表する’19年自殺白書によると、’11年から減少しているものの65歳以上の自殺者数はOECD平均の約3倍。自殺原因の1位は「経済的問題」で、実際に韓国の高齢者の相対貧困率は’14年は48.8%とOECD平均12.1%の4倍、現在もあまり変化はない。
さらに30代、40代ではマイナスだった就労率が50代から突然跳ね上がる(’19年4月韓国統計庁調査)。働き盛りに職がないのに、老後になって死ぬまで働かざるを得ないという明らかな歪みが存在しているのだ。若年期からの貧困や会社退職後の受け皿が少ないなど原因は複合的だが、可視化できる理由としては国民皆保険制度が’99年に開始されたため最低加入期間を満たさず無年金状態、または加入期間が短く、受給額が少ない点だ。公的機関の統計では’18年は65歳以上の4割しか受給しておらず、’19年は対象者77.5%の受給額が約5万円以下。即時的解決は難しい。
’18年OECDの年齢標準化統計をもとに韓国統計庁が作成(10万人当たり)。韓国の高齢者の自殺理由の1位は経済的事情、2位は健康問題だった
取材・文/安宿緑