新型コロナにおける偏見と無知だらけのパチンコ店批判。批判するなら少なくとも現状を知ってからせよ

パチンコ店イメージ

photo by yamahide / PIXTA(ピクスタ)

偏見が先走る新型コロナに関するパチンコ店批判

 新型コロナウイルスの感染状況の深刻度が日ごと増していくなか、いくつかのメディアに、ウイルス感染危険度が高い場所として、パチンコ店が度々紹介される。「アゴラ 言論プラットフォーム」に掲載された「休業させるなら学校よりパチンコ屋」(3月3日、池田信夫)や、「BLOGOS」に掲載された「マスメディアが表立って取り上げないパチンコホールのリスク」(3月12日、木走正水)がその代表格である。  しかしこれらの報道に対し、当のパチンコ業界関係者らは強い憤りを示している。彼らはこれらの記事の何に憤っているのか? 一言で言えば、これら2つの記事は、パチンコ店の現状を全く知らないまま書かれているのではないかと容易に察する事が出来るからだ。  池田氏の記事に至っては、あたかもパチンコ店で新型コロナウイルスに感染したかのようなミスリードすら行われている。(実際には、ウイルス感染者の行動経路にパチンコ店が含まれていただけで、当該店舗は店内消毒と従業員の検査のため長期に渡り臨時休業をした)  本当にパチンコ店は他の施設と比べ感染危険度が高いのか?  感染危険度が高いのに、あえてマスメディアがそれを伏せているのか?

集団感染が起こりやすい3条件をパチンコ店は満たしているのか

 パチンコ店の現状について、政府が提示している新型コロナウイルス感染の「クラスター(集団感染)が起こりやすい3つの条件」に沿って分析する。政府が提示している3つの条件とは、3月9日に新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が明示したもので、3月14日の総理大臣記者会見でも同じ内容が強調されている。曰く、 ①換気の悪い密閉空間であること ②多くの人が密集していること ③近距離(お互い手を伸ばせば届く距離)での会話や発生が行われること  これらの条件が重なった時に、集団感染の危険性が高まる。これらの条件が、昨今のパチンコホールに当てはまるのかを検証してみる。 ①換気の悪い密閉空間であること  パチンコ業界関係者らが口を揃えて強く主張するのが、特にこの①の問題である。遊技客の喫煙率の高さや煙草自体の臭いがするというイメージが先行するのか、「換気が悪い」と思っている人が多くいるが、実際には、パチンコ店の換気は、1時間当たり6回~10回も店内の空気を入れ替えられているのだ。  これは建築基準法に則ったもので、そもそも設計段階からそのような換気システムが設置されている。パチンコ店の歴史は、煙草の煙との戦いの歴史であったと言う業界関係者もいる。設計の前提自体が、500台の遊技機を設置する場合、500人の客がタバコを吸うというものだ。  まして最近では、空気内の様々なウイルスを除去するシステムを空調に導入していたり、店内の空気が一か所に滞留しないよう、空調コントロールシステムを導入していたりする店舗も多い。パチンコ店は密閉されており、また換気が悪いというのは、単なる先入観や偏見に過ぎない。 ②多くの人が密集している  パチンコ店には多くの人が密集しているというのはどうなのか。  そもそも「密集」とはどの程度の状態を指すものなのかという問題があるが、既に集団感染が発生している、屋形船やライブハウス等に比べれば、仮に隣同士で遊技をしていたとしても、肩が触れ合う距離ではない。  またこの点においてのポイントは天井高だ。空気中に滞留するウイルスを考える時、人が座る(立つ)場所の面積だけではなく、天井までの高さを含めた容積までを想定するのが妥当だ。多くのパチンコ店の天井高は、①で説明した煙草の煙の問題もあり、他の商業施設に比べ高く設計されている。その点までも考慮すれば「密集」と言える状況ではない。  何よりも昨今の「コロナ騒動」の影響で、そもそもパチンコ店の客数は大きく減っている。全国のパチンコ店や遊技機の稼働等データを集計する「DK-SIS」データによれば、パチンコ店の平日の稼働は平均値として全体の3割に満たない。悲しいかな多くのパチンコ店はすでにガラガラな状況なのだ。
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人より遊技台と向き合っている時間のほうが長い
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