AIによる現実の補完と改変という「偽造現実」。問われる真実

加工はどこまで許されるか

 写真の精細化、アダルト分野での応用、政治や経済に影響をおよぼす利用など、AI による加工について見てきた。  AI は、現実を他の形に加工するコストを劇的に下げた。そのコストはどんどん下がり、精度も上がっていくだろう。今はフェイク動画はそれほど蔓延していない。しかし、流れてくる動画のほとんどが加工されたものになればどうなるだろうか。  中国のIT大手のテンセントでは去年、自社のテンセント・ビデオで、動画の中にスポンサー企業の商品や看板を自然に合成する試みを始めた(参照:FINDERS)。AI会社 Mirriad の技術で、動画を上書きして、元々撮影されていたように広告を潜り込ませる。映画内にスポンサーの商品を登場させるように、動画内に広告を登場させるのだ。  こうした技術が進めば、同じ動画でも、見る人によって内容が違うという状態になる。共通のフェイク動画に騙されるのではなく、個別のフェイク動画に誘導される未来が、そこまで来ている。 <文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。2021年2月には、SBクリエイティブから『JavaScript[完全]入門』、4月にはエムディエヌコーポレーションから『プロフェッショナルWebプログラミング JavaScript』が出版された。
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