人はなぜ、トイレットペーパー買い占めに走ってしまうのか? ウイルスへの恐怖で心の病にならないために

「買い占めという癒やし」は長く続かない

 ただ、その「買い占めという癒やし」は長くは続かない。家に戻り、やたらと多くのトイレットペーパーを棚に詰め込んだ後は、もうなす術もなくまたテレビの前に座り込む。すると、テレビからはまた「新たな感染者が出ました」といった不安を掻きたてるニュースが流れてくる……。こんなことを繰り返していると、メンタルのエネルギーがすり減って、適応障害やうつ病に繋がる場合もある。  こういうときに大切なのは、「なるようになる」とある意味で開き直ることだ。不謹慎と思わずに「こんな状況、初めて!」と好奇心を持つのもいいだろう。とにかく「怖い、怖い……」と唱えながら自分で自分を萎縮させるのはよくない。デマに振り回されてあれを買ったりこれを飲んだり、というのも控えたい。ウイルスに感染しなくても、心の病になってしまっては意味がない。診察室の患者さんにも「心配ですね」ではなくて、「私たち、けっこうすごい経験してますよね」となるべく前向きな言葉をかけるようにしている。 <文/香山リカ>
’60年、北海道生まれ。東京医科大学卒業。立教大学現代心理学部教授も務める。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題を中心にさまざまなメディアで発言を続ける。音声アプリ「ヒマラヤ」で「香山リカのココロのほぐし方」を配信中。最新刊『オジサンはなぜカン違いするのか』
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