上級レベル:では、0.0001点差で合格点に達しなかったということはあるの?
センター試験は、2006年に900点満点に変更されます。900点満点を110点満点にする場合は、特別な得点でない限りは変換後の点数は無限小数になるので、小数第4位まで表記したとしても正確ではありません。東大は、2006年と2007年は今とは異なる計算方法で900点満点を110点満点に圧縮していましたが、不正確な点もあったため(順位には影響はありませんでした)2008年からは正確に圧縮するようになりました。その結果、すべてのセンター試験の得点は次のいずれかになりました。
圧縮したセンター試験の点数を■■■.◇□□□とおくと、
・■■■には0から110が入る
・◇には0から9が入る
・□□□には000、111、222、333、444、556、667、778、889が入る
もちろん、2次試験の得点は整数ですので、合計点の小数部分もこのルールに従います。
このように、小数部分は小数第2位がわかれば、第3位、第4位は決定してしまいますので、小数部分は実質90種類しかありません。ですので、例えば、小数部分が先ほどの.6111ということはあっても.6112ということはありません。したがって、小数第4位の違いだけで合格できなかったということはあり得ないのです。例えば、毎年、「あと0.0001点足りなくて合格できなかった」と周りに報告する受験生が出てくるのですが、そういう場合は、見間違えているか、悔しさのあまりなのか違うことを言っているということになります。
超上級レベル:東大の入試でとった合計点からセンター試験の点数はわかるの?
東大の合計点が小数第4位まで表示されているおかげで、合計点からセンター試験の得点をある程度類推できます。具体的には、センター試験の得点を90で割った余りがわかります。一例として、2018年の東大理科一類の最高点について触れましょう。この年の理科一類の合計点の最高点は、458.9667点でした。この年は、東大入試史上初めてセンター試験で満点(900点)を取った人がいた年でした。合計点の最高点の小数部分である0.9667を0.3667+0.6と考えることで、センター試験の得点を90で割った余りが、3+9×6=57(センター試験の9点が1.1点になる)となります。この年の足切りが715点であることを考えると、最高点の人のセンター試験の得点は、867点または777点に限られます。センター試験の90点の差は2次試験の11点ですので、777点の人が最高点をとった可能性もありますが、867点をとった人が最高点をとったと考える方が分があるかなと思います。
なお、参考まで、今年のセンター試験の足切りラインとその後、合格最低点で入った人のセンター試験の得点を以下に記しておきます。足切りラインは文科一類621点、文科二類612点、文科三類575点、理科一類681点、理科二類626点、理科三類611点です。合格最低点のセンター試験の得点は、文科一類695点(785、875)、文科二類635点(725、815)、文科三類678点(768、858)、理科一類685点(775、865)、理科二類712点(802)、理科三類635点(725、815)です。合格最低点のセンター試験の得点につていは、最も低い点を記し、それ以外の候補は()内に記してあります。
これを見るとどの科類も足切りラインから少し離れた人が合格最低点をとっていることがわかります。
さて、来年の東大入試では、大学入学共通テストの英語が、リーディングが100点満点のところを140点、リスニングが100点満点のところを60点に換算して英語の合計点を出すと発表されています。こうなると、今度は共通テストの段階で英語の得点が整数ではなくなります。つまり、大学入学共通テストの得点が整数ではなくなるので、東大がどのような計算方法で得点を計算するのかは関心がもたれるところです。
<文/清史弘>
せいふみひろ●Twitter ID:
@f_sei。数学教育研究所代表取締役・認定NPO法人数理の翼顧問・予備校講師・作曲家。小学校、中学校、高校、大学、塾、予備校で教壇に立った経験をもつ数学教育の研究者。著書は30冊以上に及ぶ受験参考書と数学小説「数学の幸せ物語(前編・後編)」(現代数学社) 、数学雑誌「数学の翼」(数学教育研究所) 等。