立地に魅力があれば、ターミナル駅から徒歩圏内で住居を探す高所得者層もターゲットにできるため、高い家賃相場でも入居者を集めることができる。
「そもそもライバルは近隣のアパートではなく、繁華街の分譲マンションだと考えて物件づくりをします。市街地にある分譲マンションは出し入れが面倒な立体駐車場が多く、実はかなり不便。それに対して、地価が低い隣駅なら各部屋に2台分の平置きの駐車場を確保することもさほど難しくありません。設備の充実ももちろん重要ですが、日々の生活における利便性の向上を図ることも忘れてはいけない大切な要素です」
こうした想定顧客をより具体的にすることで、設定するべき賃料の価格帯も決まってくるという。
「繁華街の家賃はかなり高く設定されているため、それよりも少し低めの水準を意識しています。たとえば、ファミリー向けマンションの相場が15万円程度だとすれば、2割ほど安い12万円前後が目安です。家賃が安いうえに設備も駐車スペースも充実しているとなれば、繁華街から1~2駅離れた物件であっても入居希望者は途絶えません。実際、私が手がけたデザイナーズアパートは新築以来、家賃を下げなくても入居者は集まってきてくれ、利回りで見ても10%程度は確保し続けています」
【ファミリー向け物件】
家族向け物件にはベビーカーを抱えながらでも上りやすいように階段を拡張。「小さなお子さんを連れて利用する際の使い勝手を意識しています」
高付加価値物件で高賃料を得る。こうしたスタイルは大城氏のような一棟モノへの投資に限らず、長く不動産投資を続けていくうえでも大きなメリットがある。
「残念ながら大家業をやっていると、空室や滞納、夜逃げといったリスクをゼロにすることはできません。しかし、高い満足度を入居者の皆さんに提供することでそのリスクは限りなく低く抑えることはできる。そもそも値下げ競争をしてしまうとキリがありません。価格でしか勝負ができない物件だと入居者さんからの無理な注文が増えてしまったりして、結果的に空室を生む悪循環に陥ってしまいがちです。それなら家賃が多少高くなっても、それ以上の満足度を提供できるデザイナーズ物件のほうが、よほどメリットが大きいと考えています」
【DINKs向け物件】
一方、DINKs向けの物件ではスタイリッシュな印象を重視。「エントランスはデザイナーズ物件の顔なので、想定入居者の感性に刺さっていくデザインを意識しています」
大城氏が考える空室の出ない物件づくりの方法論は明快だ。
「実際、自分が手がけた物件に住んでみた経験もあるのですが、そうするとさまざまな不便な点に気づきました。そうして得た発見を生かして、物件を改善していく。そんなシンプルな繰り返しこそ、選ばれ続ける人気物件をつくるための何よりのコツだと思います」
人口減少や空き家の増加など社会的な逆風に負けない不動産投資のキモは、真摯な行動を続けることにほかならない。
【不動産投資家・大城幸重氏】
’68年、群馬県生まれ。著書に『高家賃でも空室ゼロ! これからの不動産投資は地方の新築デザイナーズアパートが狙い目です』(秀和システム)がある
大城幸重氏
取材・文/SPA!編集部