高嶋哲夫氏
話は再び横浜に停留中のクルーズ船に戻る。
「乗船客の方々は七十代以上の方も多く、薬や医療を提供するという意味で横浜に停泊させるのはやむを得なかったと思います。ただ、その後の対応が悪すぎました。なんでも自衛隊に押し付けるのはどうかと思いますが、自衛隊なら細菌戦その他の知識を持つ集団がいますから、そういう見識は最初から大いに活用してほしかったと思います」
インタビューを行ったのは2月13日だが、高嶋氏によるとそれからの二週間が勝負だと言った。
「二月いっぱいで、コロナウィルスの趨勢が決まると思います。収束するのか、さらに広がるのか。時間はありませんから、この二週間かそこらのうちにあらゆる手を尽くし、つぎ込めるものはつぎ込んで徹底的に封じ込めなければなりません。病気は全世界を対象に広まるわけですから、もし一国で封じ込める実力がない国があるとするなら、世界各国が全力で支援しなければなりません」
既に3月だが、収束の気配はない。仮にコロナウィルスを封じ込められていたとしてもそれで一件落着ではない。
「コロナが収まったとしても、その後経済はガタガタになっていますからね。風評被害も広がらないようにしないといけません。収束したら、その次の手当てが必要になります」
話は少し飛ぶが、高嶋氏は台風19号の原型ともいえる「東京大洪水」を書き、今後確実におきるであろう南海トラフ・都心直下型地震についても「M8」「首都崩壊」という作品を書いている。
「首都直下型地震や南海トラフ巨大地震が起こると、日本では百兆円、二百兆円、あるいはそれ以上の経済損失が出ます。これは、世界恐慌を引き起こす恐れがあります。ここで話は戻りますがもしコロナ騒動があと半年続いたらこれも世界恐慌の引き金になりかねません」
中国発パンデミックを描く高嶋氏だが、決して「嫌中」でないことは次の言葉からも明らかだ。
「これを機に人類全体がウィルスのことを学ばなければなりませんね。きちんと対処すればそれほど怖いものではありませんが、対処しなければ人類が滅びる恐れがあるほど大変なことになります。だから、日本政府にも可能な限り人的資源もお金もつぎ込んで封じ込めに全力を尽くしてほしい。そして、全世界が一番の被害国である中国を支える姿勢を見せてほしいと思います。収束したら、中国から海外資本がみな引き上げるとか、人の行き来がなくなるというようなことはないようにしてほしいですね」
繰り返すが、筆者もコロナ禍の当事者の一人である。一刻も早い収束を心から願うばかりである。
高嶋哲夫:1949年、岡山県玉野市生まれ。慶應義塾大学工学部卒業。同大学院修士課程修了。日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)研究員を経て、カリフォルニア大学に留学。81年に帰国後、学習塾経営をしながら小説執筆活動に入る。’94年、『メルトダウン』(講談社文庫)で第1回小説現代推理新人賞、’99年、『イントゥルーダー』(文春文庫)で第16回サントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞
<取材・文/タカ大丸>
ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『
ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「
ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『
貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。