身代金の受け渡し場所で、人ごみに紛れる数十人の私服警察官と姿を見せない犯人
あ~彼女の携帯が見つかってしまったか。どうしよう!
身代金?ストーカーじゃないの?
リアルな誘拐?
カネをあるだけって何?財布の中、通帳も含めて?具体的にいくら?
カネのない浪人生に「金」っておかしくない?目的はカネ以外か?
そんなことを考えながら、何て返答するのがベストかわからないまま、取り敢えず電話をしました。しかし、男は出てくれません。取りあえず、男の要求通りにする旨をメールで伝えました。
過去2回彼女が連れ去られそうになったとき、警察の介入なしに難を逃れることが出来たため、今回も警察に知らせるかどうか悩みました。しかし、本当に誘拐目的だったら危険だと思い、S駅の地区を管轄する警察署に行き、状況を説明しました。
8:30、身代金受け渡し場所に着きました。100万円を模した紙の入った封筒を手にしています。周りには、数十人の私服警察官が普通の人々に紛れていました。
9:00、心臓の鼓動が全身に響くのがわかるくらい緊張しているのがわかります。
9:04、誰も来ません。
9:20、まだ、誰も来ません。
私服警察官の存在がバレたんじゃない?だとしたらヤバい!
9:30、携帯にメールが入りました。
「身代金の受け渡し場所を変える。女は無事だ。連絡を待て。」
その後、身代金の受け渡し場所がコロコロ変わり、私と警察官は、S駅のある地区を縦横無尽に移動させられ、犯人の指示に翻弄されました。
私と警察官らは一定の距離を保っていましたが、私は犯人に警察官の存在がバレてしまっているのではないかと、そしてもしバレてしまったら彼女はどうなってしまうのだろうかと、気が気でなりませんでした。
しかし、事態は急展開します。
彼女の携帯の電波状況から、警察が犯人の男と彼女がホテルの一室にいることを突き止めたのです。警察官らが部屋に突入し、男を確保し、彼女を保護しました。
これで一件落着、と思いきや、とんでもない事実が発覚するのです。この続きは、次回でお話ししようと思います。
※今回の記事内容は、本当にあった事件を基にしています。ただし、実在の人物や人間関係が特定されないように、話の大筋が変わらない程度に所々、変更、脚色、事実と異なることを加えています。
<文/清水建二>
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『
ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『
「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『
0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。