日本の女性に今、個人としての生き方を問う 「Red」三島有紀子監督<映画を通して「社会」を切り取る13>

「Red」を探す旅に

――主役の夏帆さんと妻夫木聡さんについてお聞かせください。 三島:二人の芝居だけですべてを見せなくてはならなかったので、大変な挑戦だったと思います。  鞍田役は最初から妻夫木さんと決めていました。妻夫木さんは、ずっと一緒に映画を作りたい人でしたし、自身がストイックで自分の尺度がはっきりしている人ですし自身の欲することに純粋な方だと思ったので、この役を深く理解して挑んでくれると思ったんですね。結果的に撮影現場では監督である私の一番の戦友としていてくれました。  夏帆さんは前作の『ビブリア古書堂の事件手帖』(18)に出演していたので、彼女の演技力については良く分かっていました。何より夏帆さんは球体の目が魅力的なんですね。その球体の目に何も映っていないところから、すべてを見透かしてしまうところまでのプロセスを撮りたかったんです。そうやって彼女の新しい面をこの映画で見せたかった。妻夫木さんも同じです。他の作品では見せたことのない妻夫木さんの表情を見せたかったんです。 ――演出の上で心掛けたことはありますか? 三島:当然、お芝居ですね。いいお芝居を作り上げていくことが、監督の仕事の中で一番大切と思っていますので。そのための美術、小道具、ラジオから流れる音楽、自然とお芝居が生まれていくように、すべてのことを考えています。そして、お芝居をしてくれているときは、ものすごい近くで凝視しています(笑)。どんな些細なお芝居も見逃さないで、それを掬い上げて紡いでいきたいんです。  それから今回はタイトルの『Red』をどう映像にしていこうかなと。『Red』とは何かを探す旅に出てみようと思いました。随所に「赤」を意識した演出はしていますね。「赤」もいろんな赤がありますし、「色」はひとつの意味で表せるような簡単なものではないですから。赤を少しずつ点在させてそれを辿っていくと…最後にどんな赤に辿り着くのかを見せて行きたいと思いました。ラストの赤。それが、今回描きたかった「赤」ですね。 ※後半では、塔子の夫である真の人物像、そしてこれから取り組みたいテーマなどについてお話を聞きます。 <取材・文/熊野雅恵> <取材場所/CozyStyle COFFEE(落合)>
くまのまさえ ライター、クリエイターズサポート行政書士法務事務所・代表行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、自主映画の宣伝や書籍の企画にも関わる。
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