新型コロナウィルス、日本のカルト団体や偽科学団体、それに類する団体はどう動いているか?

「新型コロナ対策」という宣伝文句を控えるよう呼びかけたアムウェイ

 また、カルトではないが、SNS上では、アムウェイの販売員たちが新型コロナウイルス対策としてアムウェイの空気清浄機(高いものは標準小売価格が20万円以上)が有効であるかのような謳い文句で宣伝しているケースが報告されている。  ただ、日本アムウェイは1月29日にウェブサイト上に声明文を掲載。自社の空気清浄機の新型コロナウイルスに対する効果は未確認であるとして、販売員らに「除去できると誤認させるようなオーバートークは、お控えいただくようお願いいたします」と呼びかけた。  同社は2月18日発表の声明では、「アムウェイの空気清浄機は本体が吸入する空気から、新型コロナウイルス(COVID-19)(略)などを効果的に除去します」「しかしながら、(略)空気中の汚染物質にさらされることや、それらが引き起こす健康上のリスクは、いずれのアムウェイの空気清浄機を使用しても、完全に防ぐことはできません」とした。  個々のディストリビューター(販売員)が現場でどのようなセールストークをするかは別問題だ。しかし少なくとも日本アムウェイ自身は、新型コロナウイルスに対する自社の空気清浄機の効果を否定した形だ。  アムウェイに代表される、いわゆる「ネットワーク商法」では、一般の人々を集める勧誘イベントを行ない新たな購入者やディストリビューターを獲得する。アムウェイでは、3月11日まで同社主催のイベントの中止を発表している。  ディストリビューター(販売員)に対しても、本社内でのミーティング、ディストリビューター主催の500人以上の規模のイベントの自粛を呼びかけている。

「万能」を謳うEM菌は、新型コロナ関連では控えめ

 「EM菌」は「Effective Microorganisms(有用微生物群)」の通称で、特定の菌ではなく、様々な菌の混合体だ。もともとは土壌改良用に琉球大学名誉教授・比嘉照夫氏が提唱したものだ。しかし現在では、比嘉氏自身がEM菌で放射能を消せるとか、EM関連のグッズや飲料などを使う「EM生活」をしていれば事故や災害も防げると言った調子で、EMを万能視してアピールしている。  全国の自治体や学校などで、EM菌が水質浄化に役立つとして、子供を巻き込んだイベントで地元の河川やプールなどにEM団子(EM菌を染み込ませ発酵させた泥団子)を投げ込むイベントも開催されている。一方で、効果を疑問視して、自治体がこうしたEM菌関連事業から手を引くケースもある。
菌が繁殖し菌糸にまみれた「EM団子」

菌が繁殖し菌糸にまみれた「EM団子」

 しかしこのEM菌、今回の新型コロナウイルス関連ではおとなしい。「EM菌ホテル」として知られる「コスタビスタ沖縄 ホテル&スパ」では、公式サイト新型コロナウイルス対策として「ロビーに発酵液と消毒液の設置を増設して」いる程度で、「感染症防止対策として、館内各所にアルコール手指消毒剤をご用意」、「スタッフのマスク着用を許可」とあり、ごく一般的な対応だ。少なくとも一般向けには、EMの効果を大々的にアピールしている様子はない。  逆に、EM菌の普及団体である「EM研究機構」は公式サイトで、3月に予定されていた沖縄での4つのイベントを「休止または延期」と発表している。  全体を見渡すと、一部に新型コロナウイルスを人集めや商売に利用する動きもある反面、日頃批判されている団体が意外にも社会の流れに凖じた行動をとっているケースが少なくない。カルトやニセ科学の世界の人々ですら自身の教義や理論の限界を意識せざるを得ないほどの非常事態ということ、なのかもしれない。 <取材・文・写真/藤倉善郎 取材協力:鈴木エイト、左巻健男>
ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)
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