「まだまだ序の口の段階」
新型肺炎が経済へ与える悪影響についてこう話すのは経済評論家の加谷珪一氏だ。
「’03年に発生したSARSは、終息まで約8か月かかりましたが、その間に香港ハンセン指数は15%、ダウ平均は11%、そして日経平均も18%下落しました。しかも、日本経済の基礎体力は当時より今のほうが低い。今後は外食産業や小売業、製造業まで不況の波が波及していくでしょう。また、アメリカがくしゃみをすれば日本は大風邪をひくと言われますが、今後、
米国で感染が広がれば、日本経済はどん底にまで冷え込む可能性もある」
日本は2四半期連続で経済成長率がマイナスを記録する、テクニカルリセッションに入ることはほぼ確実だと加谷氏は見ている。
一方で、やや楽観的な見方をしているのはマーケットアナリストの藤本誠之氏だ。
「現在の縮小ムードは一時的なもので、感染者数の増加ペースが低下すれば、人々も冷静さを取り戻し消費も戻ってくるはず。’11年の東日本大震災では、目に見えない放射能への不安によって外国人観光客がなかなか戻ってこなかったが、今回は
感染拡大が食い止められればすぐに戻ってくる」
藤本氏はまた、一部で囁かれる
日経平均2万円割れは「ありえない」と一蹴。五輪中止という最悪のシナリオについてもこう話す。
「東京五輪がたとえ中止されても、日本経済にとってそれほどの損失にはならない。五輪の景気刺激効果は、箱モノ建設などによるものがほとんどで、その意味ではもう役割を終えている。
五輪目当ての観光客が2週間の間に落とすお金に、大した経済効果はない」
われわれの生活に影響が出ないことを祈るばかりだ。
【経済評論家・加谷珪一氏】
日経BP社、投資ファンド運用会社を経て独立。テレビ・連載などで活躍中。近著に『日本はもはや「後進国」』(秀和システム)など
【マーケットアナリスト・藤本誠之氏】
複数の証券会社を経て、財産ネット企業調査部長。著書に『週55分で、毎週5万円儲ける株』(明日香出版社)などがある
取材・文/奥窪優木 広瀬大介 大橋史彦 アズマカン 写真/時事通信社