「○万円で暮らせるバンコク」の嘘。まともに暮らせる生活費を見積もってみた

タイを知らない人の「落とし穴」

タイ料理の自炊

1世帯が大人数ならタイ料理の自炊で安く上げられるかもしれない

 それは、どんなにタイ料理が好きな人でも毎日食べることはできない、ということだ。タイ料理は日本人の体質には合わないのだ。  タイ料理は世界中の人に好まれる料理だが、逆に言うと誰にでもわかりやすい料理でもある。中国医学の医食同源という考え方はないようだが、タイ料理にもサムンプライと呼ばれるタイ・ハーブが使われ、繊細な味わいがある。一方で、ナンプラー(魚醤)のほか多数の調味料をふんだんに使用する。つまり、タイ料理は味が濃いのだ。  脂っこいものも多いので、毎日屋台で食べると日本人はいつしか体調を崩すことになるだろう。栄養のバランスもしっかりと考えないといけない。タイ人はこういった土地に生まれ、こういった食習慣で生きているから問題はないが、途中から入ってきた外国人には合わないことがほとんどである。  そのため、日本人がタイで生活する場合、適度に和食を混ぜる必要がある。幸い、今のタイは空前の和食ブームで、田舎の奥地でも和食にありつける。ところが、こうなるとなおさら5万円で生活することは難しくなる。  そもそもタイには在住日本人が7万5647人(外務省発表の2019年10月1日時点の在留邦人者数参照)いて、日本人がタイで暮らすと大なり小なり、日本人社会と接点を持つことになる。そうなると、会合などで和食店に行くことになる。仮に日本人社会と一切関わらないとしても、たまに和食店に行くことになり、平均的に日本の1.5~2倍以上、食費がかかってくる。安い店でビールなどを合わせて1000バーツ(約3500円)としても、月に3回も行けば1万円を軽く超えていく。  自炊という手もあるが、台所のついた部屋は家賃が1万バーツ(約3.5万円)以上になる。屋台が値上がっているのはそもそも食材も高騰しているので、食費も高くなりがちだ。それ故、ひとり暮らしの場合は屋台の方が安く上がるケースが多い。気温が高いので、冷蔵庫の開け閉めだけで冷気が逃げ、食材も傷みやすいからだ。

日本人がタイで暮らす生活費をリアルに見積もると……

タイは車も高い

タイは車も高い。スバルXVも日本は220万円(2.0e-Lタイプ)だが、タイは約422万円(2.0iタイプ)

 これらを総合して考えると、完全にタイ人のように暮らす場合であれば5万円でも行けないことはない。生活費を簡単にまとめると下記のようになるのではないだろうか。光熱費や通信費、交通費は暮らし方や住む場所・形態によって大きく違うので、大雑把に見積もっている。 【タイ式の暮らし方場合】 家賃:5000バーツ(アパート) 光熱費:2500バーツ 食費:5850バーツ(屋台のみ+水1本) 交通費:600バーツ(バス往復×25日間) 通信費:400バーツ(スマホの基本料(安い)のみ) 合計=14350バーツ(約50225円) 【節約した日本人の暮らし方】 家賃:12000バーツ(中級マンション) 光熱費:2500バーツ 食費:11590バーツ(屋台+月4回和食店(1回1500バーツ)) 交通費:2000バーツ(BTSスカイトレイン40バーツ往復×25日間) 通信費:700バーツ(スマホの基本料(普通)のみ) 合計=28790バーツ(約100765円) 【そこそこの日本人の暮らし方】 家賃:24000バーツ(高級マンション) 光熱費:2500バーツ 食費:45000バーツ(和食店(1回1500バーツ)のみ) 交通費:2000バーツ(BTSスカイトレイン40バーツ往復×25日間) 通信費:700バーツ(スマホの基本料(普通)のみ) 合計=74200バーツ(約259700円)  ざっと計算しているのだが、これくらいはバンコクの生活にはかかる。日本と同じ水準で暮らそうと思ったら、25万円近くはかかってくる。この場合は日本の食材は日本の倍とはいえ、自炊するとある程度抑えられるだろう。
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さらに「遊興費」なども入れれば……
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