絶滅寸前の沖縄のジュゴン、国際機関が「辺野古新基地建設が脅威」と明記し警告

沖縄のジュゴンが絶滅の「深刻な危機」に

ジュゴンの死骸

沖縄・今帰仁村で発見されたジュゴンの死骸(2019年3月、写真提供:北限のジュゴン調査チーム・ザン)

 2019年12月、国際自然保護連合(IUCN)は、沖縄に生息するジュゴンを「絶滅危惧種」の3分類の中で最も高い「深刻な危機」に位置づけた。その一つ上の分類は「野生絶滅」だ。天然記念物でもある日本のジュゴンが、国際的な機関から「絶滅寸前」を言い渡された形となった。  人魚のモデルにもなったジュゴンは、浅い海で海草(うみくさ)を食べる海棲哺乳類だ。沖縄島周辺では3頭のジュゴンが個体識別されていたが、現状は以下の通りである。 ●個体A(オス):辺野古・大浦湾北の嘉陽沖を長年にわたって餌場としていた。2018年10月から行方不明となっている。 ●個体B(メス):2019年3月、エイのトゲに刺されて死亡。沖縄島西海岸の古宇利島周辺海域に生息していた。確認されていた唯一のメスで、個体Cの母親と考えられている。 ●個体C(性別不明):辺野古近海を生息域としていた若いジュゴン。2015年7月以降は消息が分からなくなっている。  重要なポイントが2点ある。まず前述の通り、IUCNのような国際機関が南西諸島のジュゴンを「絶滅寸前」と宣告したことだ。  IUCNは毎年、絶滅の恐れがある生物種についての情報を登録する「レッドリスト」を発表している。これまでジュゴンは世界全体で「絶滅危惧種」3分類の中で最も低い「危急」とされてきた。しかし今回、初めて沖縄のジュゴンが「南西諸島の個体群」として分けて評価され、絶滅の恐れが最も高い「深刻な危機」とされた。成熟個体数は10頭以下で減少傾向にあるとし、絶滅の危険性の高さが強調された。  IUCNは世界最大の国際的な自然保護ネットワークで、世界中の科学者・専門家が所属する6つの専門家委員会からなり、国家、政府機関、NGO(非政府組織)等で構成されている。ユネスコの世界自然遺産委員会の諮問機関としても知られている。  沖縄のジュゴンの評価は、専門家委員会の一つである「種の保存委員会」の海牛類専門家グループが下した。今回の評価は科学的な見地から行われたものであり、辺野古新基地反対の立場や世論とは一線を画している。

「辺野古新基地建設」による海草藻場の消滅も“脅威”と指摘

IUCNのウェブサイト

南西諸島のジュゴンに「CR: CRITICALLY ENDANGERED(深刻な危機)」との評価が下された(IUCNのウェブサイトより)

 もう一つの重要な点は、漁業での混獲などとともに、辺野古新基地建設が沖縄のジュゴンにとって脅威であると明記されていることだ。特に、ジュゴンの餌場となる海草(うみくさ)が広がる藻場が失われることへの懸念を、簡潔ながらもしっかりと述べている。以下は要点と、筆者による該当部分の抄訳である。 ●辺野古・大浦湾の埋め立て海域に、沖縄島東海岸にある海草藻場の3割の面積が集中している(※) ●沖縄島東海岸の藻場は、西海岸に比べて6倍もの面積がある ●「海草藻場の喪失と損傷は、沖縄のジュゴンの個体数回復にとって深刻な妨げとなる可能性が高い」と結論づけている ※参考:辺野古の海草藻場は173ヘクタールで、沖縄島周辺で最大の規模(環境省自然環境保全基礎調査より) 「主な懸念がある地点は、米海兵隊普天間飛行場の移転が予定されている、沖縄島の中部東海岸に位置する大浦湾(辺野古湾:原文ママ)である。新基地建設のためには海草藻場1カ所が新滑走路で覆われ、別の藻場も砂での埋め立てが必要とされている。(中略)埋め立て地域は約160ヘクタールにおよび、沖縄周辺の海草の生えている面積のかなりの割合を占めている――海草藻場は沖縄島東海岸には21か所あり、面積は合計539ヘクタール、西海岸には9カ所で面積は89ヘクタールである。海草藻場の喪失と損傷は、沖縄のジュゴンの個体数回復にとって深刻な妨げとなる可能性が高い」
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防衛省に“忖度”する環境省
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