絶滅寸前の沖縄のジュゴン、国際機関が「辺野古新基地建設が脅威」と明記し警告

日本政府のこれまでの対応は?

 IUCNの評価を受けて、日本政府はどのように対応するのか。辺野古新基地建設の事業者である防衛省・沖縄防衛局と、ジュゴン保護に関わってきた環境省に注目が集まる。  ジュゴン保護キャンペーンセンターの吉川秀樹さんは「沖縄防衛局は、『新基地建設はジュゴンに影響はない』と主張してきた。また、環境省は防衛局の主張を認めつつ、その一方で自らもジュゴン保護の取組みを行っているとしてきた。今回のIUCNの評価は、その主張の矛盾や取組みの不十分さを露呈させている」と厳しく指摘する。  筆者はこれまで、環境保護団体と防衛省・環境省との交渉を取材してきた。市民からの質問への回答を通して、これまでの両省の姿勢を以下のように認識している。 ●防衛省・沖縄防衛局:辺野古新基地建設の事業者であるため、基本的には工事を推進する立場。「ジュゴンに工事の影響はない」の一点張り。 ●環境省:防衛省に忖度していて「事業者である沖縄防衛局が適切に環境配慮を行なっていると認識している」と繰り返す。一方で、漁網による混獲での死亡事故を防ぐための取り組み等を保護対策として実施してきたと主張。市民がジュゴン保護の観点から広域生息調査実施を求めても「予算がない」と言い逃れをする。

防衛省に“忖度”する環境省

環境省との交渉

環境省との交渉の様子(写真提供:辺野古・高江を守ろう!NGOネットワーク)

 象徴的だったのが、2019年4月にジュゴンの危機的な状況を受けて行われた、北限のジュゴン調査チーム・ザン、ジュゴンネットワーク沖縄(ともに沖縄)、日本自然保護協会(東京)と環境省との交渉だ。  環境保護団体からの「(2頭のジュゴンが行方不明になっていることを受けて)ジュゴンの生息域の変化自体が、工事の影響を受けていることにならないか?」という質問に対して、環境省の担当者は用意された書面をこう読み上げるだけだった。 「辺野古の大浦湾における工事による影響は、環境省としては把握していない。ジュゴンへの配慮を含む、辺野古・大浦湾における工事の実施における環境配慮については、事業者である沖縄防衛局において専門家の意見を聞きながら適切に対応されているものと認識している」  また、「ジュゴンの広域の生息調査を行うべきではないか?」という質問に対しては、「特定の事業と関連づけて、環境省自らが当該事業の調査を行なって、当該種(ジュゴン)の生息確認を行うことはしていない」と責任逃れをした。  さらに「日本のジュゴンの保護の観点から、広域調査は必要だと認識している。ただ、申し訳ないが環境省の予算が限られており、その中で今後必要に応じて南西諸島におけるジュゴンの目撃情報の収集といった調査を今後検討したい」と消極的な回答をした。  環境省は、「これまで相次いで発生した漁網による混獲での死亡事故を未然に防ぐことが一番重要であると認識している」と述べている。しかし、その結果が今の危機的状況であり、IUCNからの宣告につながっているといえよう。
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このままでは絶滅危惧のジュゴンを守ることができない
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