問題なのは食材などを開催を見込んで通常以上の仕入れをした納品業者だろう。彼らの負担はしんどいものになっている。例えば、プレミアム・マグロを納品している「Arrom Barcelona」や海産物の「Maremar」はMWCの開催期間中にホテルやレストラン向けに通常よりもより多く仕入れて納品体制を整えていた。それができなくなって
売り先を見つけるのは大変な作業だと業者は告白している。勿論、在庫を捌くのにかなりの値引きをせねばならなくなるのは必至だ。
肉の場合も同様だ。「Compañía General Cárnca」のマルティン・コロメル社長は15%ほど売上が減少すると見ているそうだ。
植木業者も今回被害を被っている。展示会場を飾るのに室内用の花など700個の植木鉢を「Vivers Barri」は用意していたそうだ。6年前からMWCの会場に納品しているという。ひと鉢が最低30ユーロからのもので、用意していた全てを捌くのにプレゼントとして無償提供する場合もあるだろうと覚悟しているそうだ。(参照:「
Cronica Global」)
これらの納品業者の場合はホテルと違って保険で補填できないので被害が脆にかぶることになる。
MWCが開催されていた4日間の前後を加えて7日間を「Opportunity Week」と名付けて観光とデジタル分野のキャンペーンを実施している。観光では「Barcelona Turisme」と題して例えばガウディのバジョー邸(Casa Batlló)などを見学するのに一つの入場券で二人が見学できるといったサービスを提供している。
高速列車もバルセロナを訪れる人には乗車券の35%割引、飛行機もバルセロナをベース基地にしているブエリング航空がヨーロッパの58の都市からバルセロナに向かうチケットに20%の割引を適用している。その為に2月22日から3月5日まで1万枚の予約クーポンを用意しているそうだ。(参照:
El Diario)
デジタル分野では「Tech Sprit Barcelona」と呼ぶイベントを開催。この分野に関係した起業家らも参加して情報交換の場とするとしている。4000人の参加を見込んでいるそうだ。
MWCの開催が中止となったバルセロナであるが、その開催期間中にできるだけ多くの訪問客をスペイン国内及びヨーロッパから募る運動をバルセロナの市政が主導して展開しているわけだ。
ところで、来年もMWCはバルセロナで開催されるのか? この疑問は当面不透明のままで明白にはされないであろう。2023年までバルセロナで開催される契約は交わされている。しかし、MWCの主催者側ではカタルーニャの独立問題に派生した動きに迷惑を被っており、元政治アクティビスタで現在バルセロナ市長のアダ・コラウとの関係も彼女が市長になった時点から主催者側では彼女とは波長が合わないと感じているからである。彼女は市長になる前までMWCの開催に反対していたことは良く知られている。また、来年の開催候補地としてアムステルダムが有力だという噂が既に生まれている。(参照:「
OK DIARIO」)
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身