「主人は、口うるさいだけなんです」とモラ夫を擁護する被害妻たち
被害妻たちの離婚できない理由で、私を含む離婚弁護士がよく出会うのは、以下のとおりである。
1、モラ被害の認識がない。
2、自責の念が強い等、洗脳状態にある。
3、別居、離婚に踏み出した時のモラ夫の反応が怖い。
4、許可がないと別居、離婚に進めない。
5、経済的な不安がある。
6、「迷惑かけない」が身に染み付いている。
7、子に父親も必要と思う。
8、自分さえ我慢すればよい。
私の推論では、日本の男性の約8割がモラ夫/モラ夫予備軍である。ところが、多くの日本の女性/妻たちは、モラ被害の認識がない。
しかし、離婚の相談にくる女性たちの殆どは、モラ被害を受けていると言って間違いない。それなのに、少なくない数の被害妻たちは、夫がモラ夫であることを否定する。妻たちは夫について、「口うるさいだけ」「理屈ぽいだけ」「短気なだけ」「体育会系だから」「仕事が大変だから」と夫の言動はモラハラではなく、夫はモラ夫ではないと言い張る。モラ夫であることを認めると、自らの心の中にある離婚願望を抑え込めなくなるからに違いない。
そして、妻たちは、「主人を怒らせる私が悪い」と言い張り、いかに自分がドジか、いかに家事が不十分かなど自己批判を始める。
大事なので、何度でも繰り返す。
平等なパートナーであり、愛すべき妻を日々ディスる夫はモラ夫である。モラ夫は妻に対し優位に立ち、支配するためにディスる。ディスる理由がないと、理由を見つけ出し、作り出してディスる。妻が何か失敗をすると、嬉しそうな顔をするモラ夫までいる。そもそも、家事その他に妻として不足があるとしても、ディスり、怒っていい理由にはならない。仮に、妻に不足があるなら、その不足を夫が補って扶け合うのが夫婦/パートナーではないのか。
被害妻たちは、モラハラの理不尽さに気づき、洗脳から目が覚めると、モラ夫から逃げることを考え始める。モラ夫たちは、君臨し慢心しているため、妻の「反乱」の準備に気が付かない。そして、妻が出て行ったあとに、「何で突然、出て行くんだ!」と叫ぶ。しかし、既に遅過ぎる。妻の気持ちが戻ってくることはない。結局、
モラハラは妻だけでなく、モラ夫自身も不幸にするのである。
<文/大貫憲介 漫画/榎本まみ>