―― 辰巳さんがコンビニ問題を追及したとき、他の議員たちはどのような反応でしたか。
辰巳:私は予算委員会で「賃金泥棒」の問題を取り上げたとき、セブンイレブンのアルバイトの勤務時間が書かれたパネルを作りました。ところが、予算委員会の理事会で
自民党から「セブンイレブンの名前は出すな」と言われました。「これは事実だから問題ないはずだ」と反論しましたが、規則上、理事会の了承を得なければならなかったので、最終的にセブンイレブンの名前は隠して「大手コンビニS社」とし、パネルの色にセブンイレブンと同じオレンジ、緑、赤を使用しました。自民党はセブンイレブンから支援してもらっている部分もあるでしょうから、色々と神経質になっていたのでしょう。
また、私が委員会審議にあたって
セブンイレブンに関する質問通告をしたところ、その内容がセブン側に筒抜けになっていることもありました。もちろん森裕子さんの質問内容が漏洩したときとは違って、私がセブンについて質問すると通告している以上、所管省庁がセブンに事実関係を問い合わせるのは当然のことです。そのこと自体を批判するつもりはありません。しかし、私に対する答弁をセブン本社が書いているのではないかと疑いたくなるような場面もありました。
とはいえ、自民党の中にもコンビニのあり方に問題意識を持っている人はいます。私は決算委員会で「コンビニ会計」について取り上げたことがあります。一般の会計では、売上から原価を引いたものが粗利とされますが、コンビニ会計では弁当の廃棄分や万引き分を原価に含まないことになっています。そのため、粗利がかさ上げされ、本部へ支払うロイヤリティが膨れ上がってしまうのです。私がこの問題を追及すると、質問が終わったあとに
自民党議員がやってきて、「これはひどいな。もっと暴露してくれ」と激励されました。
また、経済産業委員会でもコンビニ会計について質問しましたが、ヤジも飛ばず、みんな私の話を静かに聞いてくれました。「セブンイレブンではこういう搾取が行われている」と話すと、みな頷きながら聞いていました。
維新の議員からも「辰巳さんの話はよくわかるよ」と言われたことがあります。コンビニ会計の問題に関しては与野党問わず広く共有されていると思います。
―― 辰巳さんはコンビニの現状を是正するためにフランチャイズ規制法を作るべきだと提唱していますが、国会議員の中でコンビニの問題点が共有されているにもかかわらず、なかなか法律が作られません。原因はどこにあるのでしょうか。
辰巳:一つは、
コンビニの所管省庁である経済産業省が規制を作ることに反対しているからです。もともと経産省は規制緩和を進めてきた省庁ですから、できるだけ規制を作りたくないという文化があるのでしょう。いま経産省はコンビニオーナーから聞き取りを行っていますが、これがガス抜きに終わる可能性も否定できません。
根本的な問題は、コンビニが大企業だということです。フランチャイズ規制法はコンビニを直接規制する法律ですから、大企業を規制する法律を作ろうと思えば、かなりの力が必要になります。ここに大きな壁があります。
しかし、少しずつ前進していることも事実です。東大阪のセブンのオーナーである松本さんが自主的に時短営業に踏み切ったことが話題になりましたが、コンビニ各社は時短営業を基本的に認める方向に動いています。24時間営業を見直せば本部の収益は落ちますが、そうしなければ新たなオーナーのなり手が出てこないからです。
これはコンビニの現状を改めるきっかけになるはずです。ローソンやファミリーマートは競って新たな見直しを提案していますが、それを通じてセブンイレブンよりも一歩前に出たいという彼らなりの戦略だと思います。セブンはこれまで他のコンビニよりずば抜けて高い収益を叩き出してきましたが、いつまでも従来のやり方にこだわっていれば、セブン帝国は崩壊するでしょう。
自民党もこの流れを無視できないと思います。地方でコンビニのオーナーをしている人たちの中には、もともと酒屋や米屋をやっていたという人がたくさんいます。地方に行けば行くほど、地方の名士というか、地の人がオーナーをやっています。
また、商店街が潰れてしまった地域では、住民たちはコンビニで買い物をしています。コンビニにはATMが設置されていますし、税金・保険料の収納代行もやっています。経産省は、コンビニは深夜営業をしているため、防犯の面でも大きな役割を果たしていると言っています。コンビニは必要以上に多くの仕事を押し付けられた結果、なくてはならない存在になっているのです。
そのため、地方のコンビニが声を上げれば、自民党も動かざるを得ません。私たちも引き続きオーナーさんたちをサポートし、フランチャイズ規制実現に向けて活動していきたいと思っています。
(1月31日インタビュー、聞き手・構成 中村友哉)
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