余計な一言が部下を萎縮させる。「聞いてるつもり上司」の落とし穴

余計な一言をぐっと我慢できるかが勝負

 落とし穴の2つ目は、「うまくいかなかったことは?」という質問に相手が答えた直後だ。「これがうまくいかなかった」「あれがうまくいかなかった」と相手が答えた勢いに乗って、ここぞとばかり、「そのとおりだ。だから、こうしろ、ああしろ」と指示・命令になってしまうパターンが多い。  相手がうまくいかなかったことを答えたとき、それに対して言いたいことがあっても、その場面ではぐっとこらえて、次の「改善したいことは?」の質問に移行することがポイントだ。ぐっとこらえる反復演習を数回すれば、その行動が身につくものだ。  3つ目の落とし穴は、「改善したいことは?」という質問に相手が答えた直後だ。「これを改善したい」「あれを改善したい」と相手が答えた勢いに乗って、ここぞとばかり、「いつまで、こうしろ、ああしろ」と指示・命令のパターンにそこから移行してしまう。その落とし穴に陥らないように、これもぐっとこらえて「サポートを得たいことは?」の質問につなげると、相手を巻き込む質問が繰り出せるようになる。  指示・命令したいことは、そこまで5つの質問を繰り出したあとに伝えれば、相手を巻き込むことの効果も発揮でき、なおかつ、指示・命令の効き目も高まる。相手を巻き込めるかどうかは、実は繰り出すフレーズの単なる順番の問題なのだ。

部下が萎縮しないよう自制を

 質問:「どのように改善したいですか?」という質問の繰り出し方  「どのように改善したいですか?」の質問は、具体的にどのように繰り出せばよいのでしょうか?  回答:改善点を指示したくなる気持ちを抑えて質問する  「うまくいかなかったことは何ですか?」という質問に答えてもらったあとに、改善したいことを聞きます。うまくいかなかったことを聞くと、上司としては、つい「こうしろ」「ああしろ」と改善点の指示をしたくなるものです。そのまま改善点の指示をしてしまうと、結局、トップダウンの指示になってしまいます。上司として答えを持っていたとしても、あえて質問して部下の口から答えてもらうのです。 ●「どのように改善したいですか?」の質問例 1)それを、どのように改善したいですか? 2)うまくいったことをさらにうまくいかせ、うまくいかなかったことを克服するために、どのようなことをしたいですか? 3)努力されたのですね。壁を乗り越えるためにはどうしたいですか?  上記3つの質問例の中で、1番目のように改善したいことを質問されると「また、詰められるのではないか」と、抵抗感を覚える部下もいると思います。2番目、3番目の例は抵抗感を和らげる表現例です。 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第177回】 <文/山口博>
(やまぐち・ひろし) モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある
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