新型コロナウイルスの影響でMWC中止。実は「ウイルス以外の理由」も……!?

世界最大の携帯端末展示会MWC中止が波紋

 世界最大の携帯・端末の展示会「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」が2月24日から27日までバルセロナで開催される予定であった。ところが、「COVID-19」(新型コロナウイルス)の感染を懸念して主催者GSMアソシエーションは2月12日、開催を中止した。この決定による波紋はバルセロナで深刻な事態を招いている。何しろ、この開催期間中にバルセロナの経済におよそ5億ユーロ(590億円)をもたらす予定になっていたからである。  主催者側がなぜ中止の決定をしたのかという疑問から始まって、展示会のブースの確保で出展社が主催者側に前金を払っているが、その返金を主催者側で負担する義務があるのか、あるいは保険会社がそれを主催者側に代わって支払うのか否かという問題。保険会社が支払うには、政府や公的機関がコロナウイルスが感染する危険性があったという指摘が必要であるが、逆に保険衛生面は万全で開催を中止したのは理解できないと指摘している。  同じような展示会Integrated Systems Europeが8万人の訪問客を見込んで現在アムステルダムで開催されている。そこには今回出展を中止した企業も参加している。にもかかわらず、バルセロナでは開催者側は中止を決めた。皮肉にも、この展示会は来年からバルセロナで開催されることになっている。  主催者側と展示会場の組織委員会の間で解決が拗れれば、主催者側が次回からの開催地を別の都市に移す可能性もある。契約ではバルセロナでの開催は2023年までとなっている。ところが、主催者側ではバルセロナの独立問題の弊害を受けてバルセロナから早く出たがっているのも確かなのである。そうなると、バルセロナにとって経済的そして国際的威信という面で事態はより深刻となる。

中止決定以前に出展をやめた企業が38社もあった

 ただ、開催中止の決定を下す前までに、出展を中止した企業は38社あった。更に中止を決定する企業が増える可能性もあった。その可能性とコロナウイルスの感染を懸念して訪問客も大幅に減少することが懸念された。出展社は2800社あるが、重要な企業が出展しないというのは深刻だ。  先ず、出展を中止した最初の企業は韓国のLG Electronicsであった。それが2月5日のことであった。それに続いてEricson、Nvidia、Amazon、SONY、NTT Docomo、Umidigi、Gigaset、Intel、Vivo、Telnet、Facebook、Dali Wireless、Interdigital、Iconectiv、TCL、MediaTek、CommScope、Amdocs、Accedian、Cisco、AT&T、Deutsche Telekom、Samsung、Sprint、Panorama Software、Ciena、F5 Networks、Ule Fone、Viber、Telnet Redes Inteligentes、McAfee、RAKUTEN、Nokia、Orange、British Telecome、Vodafoneといった企業が出展を取りやめた。  もっとも、この一連の企業の中には、COVID-19への危機感ではなく、スペイン政府が導入しようとしているグーグル税やトービン税(投機目的の短期的な取引を抑制するため、国際通貨取引に低率の課税する制度)に反対を表明する警告の意味で出展を取り止めた、と受け止めている専門家もいる。FacebookやAmazonがそれだ。この2社はグーグル税の対象となるのは明白だ。  更に、企業側で出展への関心を失っている理由として、この展示会に参加する効果が見られなくなっているということもあった。例えば、Samsungは出展の中止を発表した翌日に最新の商品の紹介を発表した。MWCに合わせて新商品を紹介するのではなく、Appleのように独自で新商品を紹介する場をつくったのだ。(参照:「El Espanol」)  なにせ、展示会での出展費用は非常に高額となっている。それに見合った成果が期待できなくなっているのだ。ブースの場所によって価格は1平米あたり1000ユーロから9000ユーロまである。EricssonとFacebookの2社だけで7200平米のブースを占めることになっていたから、その出展の為のブースの場所代は高額だ。(参照:「El Pais」)
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主催者側の思惑に反して政府の考えは……
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