カタログショッピング化した「ふるさと納税」の拭いきれない違和感と不公平感

ふるさと納税

CORA / PIXTA(ピクスタ)

「令和」最初の確定申告

 2月17日(月)から令和最初の確定申告が始まった。確定申告は面倒だという人もいるが、書類を作って申告することによって、国や地方に納入している税金の額がきちんとわかって税の使われかたを自ずと考えるようにもなる。社会保険料も年間でいくら払っているのかを再確認できる。厚生年金が高いという声があるのは、給料からの天引きであったとしても届く明細書にいくら払ってると明記しているから、多くのサラリーマンがため息をつくのだ。  現在、確定申告をする人は2200万人ほどいる。2020年1月に発表になった勤労者統計によると、就業者数は6700万人以上いるので、2200万人ということは働いている人の3分の1程度である。フリーランスや自営業者など、確定申告で税金を納める人もいるけれど、サラリーマンなどが申告するのは大てい税金を戻してもらうためだ。税金を徴収するときと違って払いすぎた税金を返してもらうには、自分で書類を集め、確定申告書などに記入し提出しないと戻ってこない。  最近は医療費控除に加え、ふるさと納税のための確定申告をする会社員も増えた。

カタログショッピング化した「ふるさと納税」

 ふるさと納税については多くの人が知るようになった。ワイドショーやニュース番組、雑誌などでも特集を組まれることがよくあるからご存知の方も多いだろう。まとめておくと、これは2008年に始まった寄付金納税の仕組みのひとつだ。その趣旨は、少子高齢化で財政難に困る地方の自治体の財政を応援しようというものだった。そこで、都会に住む人にとっての生まれ故郷、いろいろとつながりのある地方、これから住んでみたい場所、応援したい自治体など、自分の住んでいる地域以外の地方公共団体に寄付をして財政的に支援する制度ということだ。寄付なので、寄付をした本人は何らかの負担があってしかるべきなのだが、実態は年間2000円程度の自己負担額以外の本人負担をしている人は極く僅かだ。この制度が人気なのはスキームの範囲できちんと申請すれば寄付金全額が本人に戻ってくるものだからだ。つまり、自分の住所がある自治体から他の自治体に住民税の一部を移転させるだけのものなのだ。さらに、この制度では、寄付した金が戻るだけでなく、寄付された自治体は寄付をしてくれた人にお礼の品、返礼品を送ることができる。つまり、納税者は実質的な負担がないまま、お礼の品を地方から受け取ることができるのだ。その品数は20万点以上もあり、もはや地方自治体の財政を応援するというよりも、無料で楽しめるカタログショッピングのような状態になっている。  もちろん少子化などにより税収が減り財政難に悩む多くの自治体はこの寄付金制度に飛びついた。10万円の寄付を得るために9万円の返礼品を渡したとしても、地方自治体は痛くもかゆくもない。1万円が手元に残るからだ。私だって、もし9万9千円くれたら10万円あげると言われたら、幾らでも交換に応じる。それと同じ考えをする地方自治体が出てきたのは自然なのである。そして、ふるさと納税制度を紹介するサイトや目先の損得しか考えないお抱え経済ジャーナリストなどは、この制度をこう説明する。 “みんなで地方を応援しよう”、”あなたの懐は痛まない”。つまり、寄付をする人の実質負担はなく、お礼の品、返礼品がもらえる。返礼品の多くはそれぞれの地方の名産品なので、地方経済にプラスに働き、寄付金が入る地方の財政は豊かになる。3者が皆がハッピーになる制度などと説明する。  なるほど!と思ったら大きな間違いだ。あなたが住んでいる地方自治体の財政はどうなるだろう、という視点が完全に欠けている。あなたが納める住民税は、あなたの地方の福祉や教育、行政サービスの財源である。それらが、どんどん他の地方に移転してしまって減ったらどうなるか?実際に都市部の自治体は財源が大きく減ってしまい困っている。例えば、神奈川県の川崎市は税収がふるさと納税のために49億円も税金が流出してしまい困ってると公表した。いや都市部だけでない。地方に住んでいる人でさえ、ふるさと納税を申告し本来は地元自治体に入る税金を他に送金してしまうので、自分の住んでる地方自治体の財政を大きく毀損している。困った自治体は、よその自治体に住む人から税金をもらわないとやっていけない。そのために、魅力的なお礼の品を並べる。こうして、地方自治体のふるさと納税無料ショッピング・カタログは分厚くなったのだ。
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金持ち優遇に過ぎないふるさと納税
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