カタログショッピング化した「ふるさと納税」の拭いきれない違和感と不公平感

「良い面」もあるが、税制度としては不公平すぎる

 私はふるさと納税制度を全面的に否定するつもりはない。この制度のおかげで、例えば昨年の沖縄の首里城消失による再建資金の調達や、さまざまな天災による地方の復旧のために返礼品がなくても善意を寄せる人は多数いたからだ。ここには本来の地方を応援しようという趣旨が息づいていると思うからだ。ただ、これらに寄付をしようという人にお願いしたい。ふるさと納税の寄付行為をする際は、ポータルサイトでどのようなものがあるか調べたとしても、直接地元のホームページをたどってそこで直接申し込んで欲しいということだ。個々の事例はわからないが、通常の返礼品があるものはもちろん、災害や文化財消失のための寄付までポータルサイトが手数料を得ている可能性がゼロでないからだ。  このようにふるさと納税制度には様々な問題がある。大きな問題点がある。まずは返礼品制度は続けるべきかということだ。特に高額所得者が本来納めるべき住民税の大半を返礼品という形で取り戻しているという実態だ。そして、税の多くが制度のためにポータルサイトに流れてしまっているということである。これらの改正がなされないのであれば、私はふるさと納税制度は即刻やめるべきだと思う。何しろ、本来救われるべき地方の自治体に住む住民もその住民税を他の地域に渡してしまっているという事態はどう考えてもおかしい

「ワンストップ特例」をする人は要注意

 最後にここまで拙文を読んで下さった読者に注意喚起を一つしておきたいと思う。  ふるさと納税制度がここまで盛んになった理由をもう一つあげるとすれば、それは平成27年度に始まったワンストップ特例制度である。それまでも、確定申告をすることによって初めて自己負担は2000円であとは懐の痛まないふるさと納税制度であったものの、確定申告をするのが面倒だからと二の足を踏んでいた人が多くいた。ところが、この新制度によって、年に5つまでの自治体の寄付であれば、簡単な手続きをすれば、確定申告をしなくても寄付金額が戻ってくるようになったからだ。  ただし、このワンストップ特例制度は、確定申告をしない人という条件がある。つまり、医療費控除などでサラリーマンでも確定申告をする必要が出てきた人は、このワンストップ特例制度を申し込んでいたとしても適用されないということになる。戻ってくると思っていた寄付金がきちんと戻ってくるようにしておきたい。確定申告をしない人は税に対して無頓着なことが多い。ワンストップ特例制度を申し込んでいるから、税は戻ってきているだろうと思っているけれど、本当に戻ってきたかどうかを確認している人は思いの外少ないものである。全ては人がやること、システムだって間違いはある。どうか、取らぬ狸のなんとかにならないように注意してもらいたい。  ただし、確定申告をしなくても戻ってくる税金がある。それは、ふるさと納税を利用した人が使っているワンストップ特例制度で戻ってくる所得税や法人税なのである。 <文/佐藤治彦>
さとうはるひこ●経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行ではデリバティブを担当。その後、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。著書に『年収300万~700万円 普通の人がケチらず貯まるお金の話』(扶桑社新書)、『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』 (扶桑社文庫・扶桑社新書)、『しあわせとお金の距離について』(晶文社)『お金が増える不思議なお金の話ーケチらないで暮らすと、なぜか豊かになる20のこと』(方丈社)『日経新聞を「早読み」する技術』 (PHPビジネス新書)『使い捨て店長』(洋泉社新書)
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