ファッション、カルチャー。変貌する渋谷の現在とこれから

「渋谷系」を生んだ街で今、聴かれる音楽は!?

魔界都市シブヤの光と闇

サエキけんぞう氏

 東京で「音楽の街」と呼ばれる場所は数あれど、ライブハウス、クラブ、CDショップなどの音楽関係の店舗数が突出しているのが渋谷だ。  現在、「渋谷の音楽とは何?」と聞かれてイメージするのも、人によりバンドサウンド、HipHop、アイドルなど多種多様だろう。なぜなら、それぞれに「聖地」と呼ばれる場所が存在するからだ。  このようにありとあらゆる音楽の発信地となってきた渋谷だが、忘れてはならないのが’90年代に音楽業界を席巻した「渋谷系」だ。ピチカート・ファイブ、オリジナル・ラブ、フリッパーズ・ギターなどが一時代を築いた。  では、音楽ジャンルが細分化し、「みんなが聞いているヒット曲」も生まれにくい現在、渋谷で聴かれている音楽とは何か? 渋谷系アーティストと親交が深く、長年渋谷に事務所を構えるミュージシャン・サエキけんぞう氏に聞いた。

一番勢いがあるのは「AOR」!?

「渋谷のアナログレコード店で今、一番勢いがあるのはAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)。大人のボーカルロックですね」
魔界都市シブヤの光と闇

フィロソフィーのダンスは’70年代感を出す注目のアイドルグループ

 AORと言っても、音楽通でなければピンとこない人も多いだろうが、「流行に敏感な人たちは今、古めかしい音を求めているんです」とサエキ氏は解説する。 「この傾向は、特に作る側の中で顕著です。アイドルだと、『フィロソフィーのダンス』。よく聴くと、ものすごく凝って作られた’70年代のディスコ音楽が下地になっています。実はこれはかつての『渋谷系』が“誰も知らなかった曲”を元ネタにしたのに通じます」
魔界都市シブヤの光と闇

WAYWAVEは、ソウルやシティポップを鳴らす注目のアイドルグループだ

 音楽マニアをうならせるような作曲方法は「渋谷系」の伝統ということか。ほかにも「WAYWAVE」というソウルデュオアイドルは「曽我部恵一さんや小西康陽さん、遡ると大瀧詠一さんなどを彷彿させるシティポップでソウルですね」とサエキ氏。  だが、そもそもなぜ渋谷でこういった音楽が生まれるのだろう? 「新宿や池袋は経済力もポテンシャルが高いから、大衆向きの総合的な音楽が生まれる傾向があります。一方、渋谷はかつて『はっぴいえんど』や『はちみつぱい』といったエッジの立った人々が、現在もあるBYGという喫茶店に集まっていましたし、のちにはチーマーやヤマンバギャルもいました。渋谷というのは『変わり者を受け入れる街』なんですよね」 【サエキけんぞう氏】 ミュージシャン、作詞家。’80年、デビュー。パール兄弟で「君にマニョマニョ」等がヒットし、現在はジョリッツで活動。音楽関連著書も多数 <取材・文/櫻井れき Mr.tsubaking 筒井あや>
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