間違った科学的・心理学的知識を広めるタレントや知識人の「2つの弊害」

レコメンド機能によって抜け出せなくなるインフルエンサーの呪縛

 科学的・心理学的という言葉を乱用するインフルエンサーの言葉やパフォーマンスに騙されてしまう方々を見ていると、そうした方々は見た目が派手で簡単に習得できるノウハウを求めているように思えます。  また、自分で書籍や論文を調べ、データとロジックから考えることをせず、インフルエンサーの言葉を鵜呑みにしているように見受けられます。  事実、私が開催している表情分析のセミナーの質問コーナーで某インフルエンサーの名前を出し、「○○はこう言っているけど、どうなんですか?」という質問を多々受けます 学説や理論ではなく、それらの説や理論を紹介しているインフルエンサーの名前を挙げていることが問題です。

アルゴリズムによって、似非科学ばかりが人々の目につくようになる

 なぜ問題なのでしょうか。  こうした方々、特にあるインフルエンサーのファンの方々は、科学者・研究者によって書かれたまともな科学書籍からではなく、インフルエンサーの動画から科学知見を知るのだと思います。  インフルエンサーの動画を見て影響された方々が、それを盲信します。動画再生数が上がり、注目度が上がり、様々な方の目に触れる動画になります。その動画に紐づけられたインフルエンサーのサービスや本をweb上で見つけ、購入する方もいるでしょう。  購入・閲覧履歴からのレコメンド機能によって、マイページやwebページはそのインフルエンサーあるいはその界隈・類似のサービスや本で埋め尽くされるでしょう。まともなことが書かれている科学書籍や品質がよい、あるいは真に素晴らしいサービスは、インフルエンサーのサービスや本に隠され、目に触れることすらない、そんなことになっているのではないかと危惧しています。   さて、シリーズ5回に渡って、科学を乱用・誤用するインフルエンサーを批判してきました。  しかし、こうした乱用・誤用の責任は、科学の利用者側だけにあるのでしょうか。つまり、科学を生産する側、すなわち科学者の側の責任はないと言えるでしょうか。次回はシリーズ番外編として、科学的・心理学的という言葉を多用するインフルエンサーの不都合な真実<番外編>~科学者の責任と役割~をお送りします。 <文/清水建二>
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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