米国も最警戒。麻薬王が擁するメキシコ麻薬カルテル「シナロア」を凌ぐ新興勢力「CJNG」

米国務省によるエル・メンチョの指名手配ポスター

米国務省によるエル・メンチョの指名手配ポスター photo via US Dept of State(Public Domain)

麻薬王の老舗組織と新興凶悪集団の抗争激化

メキシコの麻薬組織カルテルの両雄シナロア(Sinaloa)ハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)のどちらがメキシコと米国の2か国で影響力があるかという疑問が関心を誘っている。というのは、過去の配信記事*でもお馴染みのCJNGが最近著しい成長を遂げているからである。 〈*”現在メキシコで最凶となっているカルテルCJNGに対抗すべく、他のカルテルが団結して200人の殺し屋を送り込む”、”メキシコ最大最凶のカルテルCJNGを率いる1000万ドルの賞金首、「新麻薬王」は元警官だった”、”メキシコの凶悪カルテル、警官4人を誘拐し処刑。尋問シーンが動画でSNSに”〉

ボスが元警官の新興精鋭凶暴軍団CJNG 対 政治力でのし上がったシナロア

 CJNGの前身はカルテル・ミレニオだ。ミレニオはシナロアと同盟を結んだ仲であった。ミレニオの二人のリーダーの一人が亡くなり、もうひとりが逮捕された後、2派に分裂した。その一派が2009年に現在のCJNGを立ち上げたのであった。  CJNGのリーダーのネメシオ・オセゲラ・セルバンテス(通称エル・メンチョ)は警察官として働いたこともあり、メンバーは軍隊式に統率が取れ、凶暴であるが政治家おや警察そして軍隊にも資金力でもって影響力を発揮させたことが僅か10年でメキシコのカルテルの一翼を担うまでに成長した要因だ。  それに対して90年代後半から成長したシナロアはリーダー、ホアキン・グスマン(通称エル・チャポ)がカルデロンとフォックスの二人の大統領政府の庇護を受け、その代わりにライバルのカルテルの情報を政府に流して成長していた。そして、エル・チャポは麻薬王と呼ばれるようになっていた。シナロアの全盛期にCJNGの前身であるカルテル・ミレニオがシナロアの分派といった形で協力していたのである。  エルチャポは現在米国の刑務所に終身刑で収監されている。そして次の麻薬王と称されているのがCJNGのエル・メンチョである。しかし、エル・メンチョは重病で長生きはできないと推察されている。
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メキシコと米国で繰り広げられる縄張り争い
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