四半世紀の時を経て、新聞系サイトが英数字の表記を半角へ

その昔、自動で修正するプログラムを自分で開発して配布していた

 さて、冒頭に書いた伏線の回収である。「私はこの話題について、書かなければならない理由があった」と最初に書いた。   私は18年ほど前、2002年3月3日に「ちょこっと強制リンク」というソフトを作って、ネットに公開した。「Internet Explorer」の右クリックメニューに追加されるソフトだ。  このソフトは、Webページ内のリンクらしき文字列を探して、自動でリンクにしてくれる。先頭の「h」や「ht」を抜いたURLや、全角URLを、自動で解析して正しいリンクにして、ページ内に埋め込む。  当時の2chなどの掲示板では、「https://hbol.jp/」というリンクを直接書くのではなく、「ttps://hbol.jp/」のように表記して、自動リンクを避けるという文化があった。こうしたURLは、参照元をリンク先に知らせずに、ユーザーを誘導するという目的があった。  ネット掲示板の利用者は、こうした欠けたURLをコピーして、手動で直して、Webブラウザのアドレスバーに貼り付けて移動していた。私は面倒だと思ったので、Webページ内を解析して、自動でリンクに置換するプログラムを書いて公開した。  そのプログラムは、そこそこ受けて、様々な要望が寄せられた。その中に、新聞社のWebページの全角URLをどうにかしてくれというものがあった。なるほど、あれは不便なものだと思い、機能を追加して、自動で半角に変換してリンクするように改良した。  そうしたソフトを作って公開していたのが18年前である。それから新聞社が半角表記になるまで、長い年月が掛かった。感慨深いと言わざるを得ないだろう。  私はプログラマーでもある。そのため世の中で不便と思ったことは、コードで解決することが多い。そこから現実の社会が変わるのに、どれほどの時間が掛かるのだろうかと常々思っている。  朝日新聞デジタルは、1995年に asahi.com(アサヒ・コム)の名称で開設された。全角のURLが半角に変わるのには25年掛かった計算になる。慣習というものの強さを、今回の変更で強く感じた。 <文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。2021年2月には、SBクリエイティブから『JavaScript[完全]入門』、4月にはエムディエヌコーポレーションから『プロフェッショナルWebプログラミング JavaScript』が出版された。
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