山口博氏
長谷川:「その10年間の私の姿を知る方からは、『大変でしたね』と言われますが、営業や人事の仕事を通じて『あれだけのことを経験してきた』『逃げることはなかった』という自身が知っている『限界』から比べれば、まだまだこんなものではないと客観視している自分がいました」
山口:「私の演習経験をふまえても、
客観視する人は、スキルが向上しやすいということがわかっています。あくまで一般には、ということですが、資格をお持ちの方は、対人スキルに苦労されている方が多いように思います。しかし、長谷川さんは、いつもレスポンスが早く、内容もわかりやすく、そして相手の立場に立った言い回しをされていて、一緒に仕事をしたり話をしていて、ストレスを感じることがありません。顧客を巻き込むために、どのような対人スキルを高めていらっしゃるのですか」
長谷川:「『
面談ストーリーはひとつではない』『
反論せず代案を示す』『
クローズが面談の印象を決める』『
プロこそ専門用語を使わない』ということです。
『クローズが面談の印象を決める』ので、『何を決めたのか』『今から互いに何をするのか』をはっきりさせ、
ポジティブな言葉で結ぶことを心がけています」
山口:「大賛成です。私の言葉で申し上げれば、人それぞれで異なるモチベーションファクター(意欲を高める要素)を見極めて、対話をしたり、代案を提示したり、クローズしていけば、相手を巻き込みやすくなるわけです。そのことを長谷川さんは実践されているのだと思います。
起業を志す若者にこのスキルだけは身につけておいたほうがよいというものがありますか」
長谷川:「強いリーダーシップだけで事業や組織を引っ張っていくことが難しい時代になりました。ビジネスモデルの構想やノウハウの蓄積だけでなく、日々受けているマネジメントの巧拙や上司の言動、組織のルールや使っているツール、将来の経営に無駄なものはひとつもありません。
モチベーションを下げられるようなマネジメントを受けたのであれば、『自分ならこうする』というカードを増やしておく機会です。
ですから、いまの会社で
日々経験していることは自身を成長させるチャンスととらえ、全力で臨み吸収しておくことが必要です。そうした姿勢を見せていると、
自ずと周囲から支援者が現れるものです。それは今あなたが離れようとしている職場関係者や取引先かもしれません。そうした
人の縁もまた事業発展の糧になるのです」
<対談を終えて>
モチベーションを上げることが個人や組織のパフォーマンス向上につながるということはよく言われることですが、組織の中ではネガティブな言動が氾濫しています。長谷川さんのキャリア開発を実現した根底には、チャレンジする想いも、試行錯誤の姿勢があり、その根底には、ポジティブ展開スキルがありました。
それもネガティブなマネジメントを受けたとしても、自分が学ぶ機会だと捉えるほどのポジティブさが、お客さまの支持を集めているのだと思います。(モチベーションファクター株式会社・山口 博)
nonpii / PIXTA(ピクスタ)
筆者はビジネススキルを向上させる演習プログラムを実施している。なかでも、顧客や他部門の人、上司や同僚や部下を巻き込む言動を身につける演習では、話し手と聞き手の2人一組でロープレをする演習を繰り返す。