「宇崎ちゃん」キャンペーン第二弾、注目すべき点は何か

重要なポイントは何か

 とはいえ、それはあまり重要な問題ではない。われわれが注目するべきは、日本赤十字という公共性の高い団体が、ジェンダーと表象の問題に対して「真摯に受け止め」、独自のガイドラインを作成するという前向きな姿勢を見せ、具体的な作業過程は分からないが、実際に広告として公開された表現が、その姿勢を認めるのに十分な内容であったという事実だ。このように広告主が表象の問題に対して責任ある態度を示すのならば、表現をめぐるコンフリクトは少しずつ減少していくだろう。  10月の記事で、筆者は公共団体と漫画・アニメのコラボで「炎上」するのはごく一部であると述べた。責任者の自覚がありさえすれば、広告がジェンダーの問題と向き合うことは、それほど難しいことではないのだ。

なお残る疑念と「否認」論者問題

 もちろん、先述したように、赤十字ガイドラインの中身は公開されていないし、それが今回どのように適用されたのかの経緯もほとんどわかってはいない。したがって、献血キャンペーンにおいて、再び問題のある表現が登場する可能性は残されている。だが、そのときは再び抗議の声があがり、赤十字はガイドラインの公表を強いられることになるだろう。  また、筆者の立場とは異なるものの、「萌え」表象それ自体が「性的客体化」の技法なのであり、そもそもそうした作品とのコラボレーションを行うべきではない、という意見も依然として存在するということは付言しておく。  ここで大切なのは、以前も述べた通り、不誠実な「否認」論者については相手にしないことだ。今回もネット上では、「前回と今回、何が違うのかわからない」とか「前回はポスターで今回はクリアファイルなのだから内容が違うのは当たり前」とか「作者が好きに描いたと言っているのだから何も変わってはいない」など、愚にもつかない論が溢れかえっている。「前回のキャンペーンでポスターを否定したフェミニストの分が悪くなったため、慌てて肯定に転じた」などの陰謀論さえ広まっている始末である。  広告とジェンダーの関係について、責任と決定権があるのは「否認」論者ではなく、広告主(今回の場合は日本赤十字)だ。第二弾キャンペーンに際して、赤十字が動くのに、「否認」論者の説得は必要がなかった。「否認」論者を迂回することこそが、議論をよりシンプルに、前に進ませることができるのだ。 <文/北守(藤崎剛人)>
ふじさきまさと●非常勤講師&ブロガー。ドイツ思想史/公法学。ブログ:過ぎ去ろうとしない過去 note:hokusyu Twitter ID:@hokusyu82
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