障害を持つヒロインの成長を描く。『37セカンズ』HIKARI監督に聞く<映画を通して「社会」を切り取る9>
下半身不随のヒロインの成長を描く
障害者の性をテーマに
その時に障害者の性の話を聞いて、自分が女性であるのに男性が主人公の話を書くのは違うかな、とも思い始めて。そこで、熊篠さんに紹介して頂いた下半身不随などの障害を持っている女性たちやサンフランシスコにいるDr.コーエンというセックスセラピストに会って取材を始めました。
――取材の中でどのような話が印象に残りましたか。
HIKARI:そのヒアリングの中で下半身不随の女性でも自然分娩もできる、セックスで感じることもできると聞きました。下半身不随であるということは普段は何も感じないということですが、にもかかわらずセックスで感じることができる、そして、赤ちゃんが自分の力で出て来ることができる。その女性の持つ魂の強さみたいなものが素晴らしいと思って、元の男性が主人公のストーリーを下半身不随の女の子が主人公のストーリーに書き直したんですね。
――「障害者の性」というテーマは重いテ―マであり、ある意味挑戦だったとも思います。
HIKARI:まさにその「重い」テーマを誰かが取り上げて撮らなくてはという思いがあったんです。「なぜそこに行くの?」という声もありました。でもそれは健常者の言葉。障害者の人たちはその問題と毎日向き合っているのに「重い」と言う理由で取り上げないのはおかしいと感じました。しかも、このストーリーは障害者でなくても成り立つものなんです。
――そうですね。恋愛や性に悩んだり、母親との関係に葛藤したりするのは健常者も同じです。脚本を書き始めたのはいつ頃でしたか?
HIKARI:2016年でした。2016年の5月に初稿が上がった後、8月に開催されたサンダンス映画祭とNHKが共同で毎年主宰している脚本のワークショップに参加し、ストーリーのブラッシュアップをしました。サンダンス映画祭からは1名先生が来ますが、1日目は脚本の書き方のレクチャーを受け、2日目は脚本に対する具体的なアドバイスをもらいます。
そのワークショップで日本代表作品に選ばれたことがきっかけで映画化に向けて動き出しました。
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監督・脚本:HIKARI
出演: 佳山明、神野三鈴、大東駿介、渡辺真起子、熊篠慶彦、萩原みのり、宇野祥平、芋生悠、渋川清彦、奥野瑛太、石橋静河、尾美としのり/板谷由夏
2019年/日本/115分/原題:37 Seconds/PG-12/配給:エレファントハウス、ラビットハウス/ (C)37 Seconds filmpartners
挿入歌:「N.E.O.」CHAI <Sony Music Entertainment (Japan) Inc.>
2020年2月7日、新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
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