佐高信さん
――なぜ関西生コンだけが、苛烈な弾圧に遭っているのでしょうか。
佐高:労働組合というものが、闘わないものになってしまっている。だから労働組合として当然のことをしているだけで目立ってしまう。関生が突出しているように見えるけれども、周りが全部水没しちゃっただけなんだよな。本来は、関生が普通なのよ。何も特殊なことはやっていないと思う。
木村:関生の場合は相手方の企業が一昔前で言えば暴力団とつるんでいたような連中ですから、スト破りの時も暴力的で激しいスト破りをしてくるような連中が相手になるわけです。
お行儀よくしていてはとても太刀打ちできませんから、関生にも荒っぽい面はありますけれども、要求を突き付けて決裂すればストライキをしたり、抗議行動をしたりするのは、これはもう、まったくの当たり前のことです。
佐高:だからその「荒っぽい」っていうのも、向こうがあっての反作用だから。こっちが特に荒っぽいわけじゃなくて、向こうが労働法とかそういうものを全部無視するから、ということなんですよね。
木村:だから本当に「威力業務妨害」(編集部注:関生の組合員は「威力業務妨害」などの嫌疑で逮捕されている)なんてまったく馬鹿げていると思います。要するに威力をもって業務を妨害するから労働組合としての力になるんです。それを労働組合法上、民事上・刑事上免責されることになっているわけですからね。
やっぱりまとまった数でストライキすれば、工場での生産がストップするとか、極端に落ちるということが起きますが、それが労働組合の力なわけだから、「そんなもん犯罪や」って何を言っているんだろうと。
議員声明のなかでも触れましたけど、今までは生コンの製造メーカーっていうのは中小零細がほとんどで、セメントを買う時は大手セメントから高く売りつけられ、生コンを売る時になったらゼネコンから安く買い叩かれる。収益が上がらない構造になってるわけです。そういう中で文字通りの水増しの問題、シャブコン(編集部注:水を多く混入させた劣悪なコンクリート)の問題も出てきていた。だから労働組合が適正価格を維持することによって、そういう粗悪なコンクリートが作られるのを防ぐ必要があるんです。
ただ、関生がそうした活動をしてきたからこそ、大手セメントやゼネコンは中小零細の生コン会社に対してやりたい放題やれなくなってきている。中小企業を協同組合に束ねて、共同受注・共同販売っていう形で、大資本のやりたい放題にさせないっていう、そういうタイプの運動は資本の側としては絶対許さないというのもあるんでしょう。
木村:そもそも労働組合の組織率が17%とかになっちゃってるし、組合の多くがストライキなんて20年も30年もやってない。そうすると関生が普通のことをやっているだけで突出してしまう。
繰り返しになりますが、それでなかなか支援の輪が広がらないわけです。連合加盟の労働組合なんて、ほとんど素知らぬ顔という状態です。何の問題でも、こういう弾圧や異常事態に対しては、日ごろの対立関係は一旦脇に置いて支援するっていうのが当たり前だと思うんですけどね。
佐高:日教組もストライキを全然しなくなったでしょう。だから僕は執行部に質問したことがあるんですよ。組合費とは別に徴収されている闘争準備資金はどうしているのかって。この積立金をさ、関生にカンパしたらいいのにと思うよ。自分たちが闘争しないんだから、闘争している組合に支援すればいい。
――今後、関生を支援するための具体的な活動は予定されていますか。
木村:とにかく国政政党にきちんと抗議するよう申し入れをしていきたいですね。抗議声明には地方議員からの賛同がある程度集まってるんですが、大半は無所属とか国会では議席のない小さな政党の所属で、立憲民主党の人はたった10人くらいしかいないんですよ。痩せても枯れても最大の野党ですからね、これでいいのだろうかと思います。
やっぱり国会できちんと取り上げてほしいと思います。国政政党が動けば少しは状況が変わるんじゃないですか。社民党も党としてはあまり動いてくれていないのが現状です。
※日本の労働組合運動の問題点や社会に蔓延する自己責任論については、近日公開予定の続編をお待ちください。
<収録・構成/HBO編集部>