石川さんが#KuTooの活動の中に大きく位置付けているものとして、パンプスの着用など、性別による服装などの強制はパワハラである、と厚生労働省が指針に明記すること、また、男女雇用機会均等法でもヒール付きの靴の強制を性差別として禁じるように求める運動がある。
厚労省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会により、国が企業に求めるハラスメント対策の指針が正式に決定したが、1139件と多くのパブリックコメントを集め、うち100件以上は#KuTooに関するものだった。求職者や就活生はハラスメントからの保護の対象外、「使用者の弁解カタログ」という批判も出て、#KuTooで提起された視点は盛り込まれなかった。指針が決まる直前の昨年12月3日にも厚労省に署名1万8856筆の署名と要望書を提出している。
「
厚労省は6月に署名を初めて出した時から、12月に至るまで動いてくれていません。国会の答弁でも『パワハラにあたりうる』ですとか『男女雇用機会均等法の趣旨に合っていない』というのが出ているのにも関わらず、です。
6月の時点ではヒールやパンプスで女性が苦しんでいる、ということについて、厚労省側は『初めて聞いた、それで受け取ります』ということだったのですが、その後もいろいろな声が出ているのにも関わらず、解決しようという意思が見られない、というのが腹がたつ(笑)パブリックコメントが多数あっても、それでも反映されない。
労働組合の連合ですとか社民党の福島みずほさんが攻めてくださったこともあって、パンフレットで周知することにはなりますと、そういう言葉はいただきました。でも、パンフレットをどれだけの人が読むのか、また掲載されるにしても、逆に『こういう場合なら履かせてもいいんじゃないか』『怪我したら履かなくてもいい』となったら困りますから、厚労省と書き方の話し合いはさせてもらっています。
#KuTooは、労働組合ですとか、政党でも野党側には協力してくれる方も多いです。最初は立憲民主党の尾辻かな子さんが問題を取り上げてくださいました。共産党の吉良よし子さんも就活セクハラの問題と絡めて、勉強会などでお会いしてお話をしました。自民党? 全然ですね(笑)」
厚労省に対する運動は継続するという石川さん。#KuTooのチームとともに、たとえば就活生向けの#KuToo運動なども展開している。
「#KuTooの働きかけに対して、どこかが勇気を出して自分から変わっていく、というのでなければ、やっぱり、法律を変えていくしかないと思います。法律で決めれば、変わっていくしかなくなる。男女雇用機会均等法からみてダメです、パワハラに当たります、というように。
あと、#KuTooのチームができたんですね。10人くらいで。皆さん他に仕事をしながら、活動に賛同してくださった方たち。その人たちと集まって、どういうことができるのかを話しているんですけれど、大学の就活センターみたいなところに、就活はフラットシューズでいいんだ、というチラシを置いてもらって、パンプスを履くのが当たり前、というのではない空気を作っていくという交渉をしたり。チラシを置いてもらえる大学も出てきています。
ただ、就活のスーツや靴を売っている業者との契約があって他のを置けない、と言われたパターンもあるそうです。フラットシューズでいいじゃないですか、とは気軽には大学側は言えないかもしれません。でも、企業の方も、若干すれ違いがあって、実はパンプスをはいていなくても気にしていない場合もある。でも、就活のサイトなどを見ていると、保険をかけてでもないですが、忖度してパンプスを履いてしまうというようになってしまっています」
実際に企業がどの程度気にしているのかわからないが、就活生は靴で減点されないよう「念のため」パンプスをはかざるを得ないのが現状だ。法律に明記されれば、現に職場で働く女性たちだけでなく、就活生もヒールのある靴から解放されるかもしれない。
近日公開予定の続編では、ヌードについて、今後の活動について話を聞いた。
<取材・文/福田慶太>
フリーの編集・ライター。編集した書籍に『夢みる名古屋』(現代書館)、『乙女たちが愛した抒情画家 蕗谷虹児』(新評論)、『α崩壊 現代アートはいかに原爆の記憶を表現しうるか』(現代書館)、『原子力都市』(以文社)などがある。